墓じまいや改葬の手順知って後悔なく 費用に手続き、意外と大変

 少子化や過疎化を背景に、先祖が眠る墓の行く末を案じ、墓じまいや墓の引っ越し「改葬」をする人が増えている。後々悔やむことがないようにするには、どうすればいいのだろうか。
(生活文化部・越中谷郁子)

定年退職を機に実行

 仙台市若林区の男性(60)は今年8月、宮城県北の寺院にあった母方の墓を、自宅から車で15~20分の寺院に移した。「気が向いた時に、気軽に墓参りできるようになった。ほっとしている」と語る。

 祖母の代に仙台市へ移り住み、県北には年3回、墓参りに訪れるだけだった。生前、祖母が「墓を近くに移したい」と言っていたことや、1時間以上かけて墓参りに行き、高齢の母親が体調を崩したことから、改葬を考え始めた。

 「息子に迷惑を掛けないよう、気掛かりなことは自分の代でやってしまおう」と、3月に定年退職したのを機に実行に移した。長男が「やっぱり墓地でお墓に手を合わせる形がいい」と言ったため、自宅近くの寺院を見学して、新たな墓地を確保した。

 男性は「元の寺とのやりとりや改葬先の選定、行政手続きなど、とにかく時間と手間がかかり、精神的に疲れた。余裕がないとできない」と振り返った。

 厚生労働省の衛生行政報告事例によると、2019年度の改葬件数は全国で約12万4000件。09年度の約7万2000件の1・7倍になった。このうち東北6県では約6600件から約7300件に増えている。

 墓事情に詳しい供養コンシェルジュ協会(東京)理事の吉川美津子さんは「地元に残って墓を守る人がいない、そもそも後継者がいないという現象が地方で顕著になっている。墓を大切に思うからこそ、終活の一環としてきちんと整理しようと考える60~70代が増えている」と分析する。

 改葬の基本的な手順は表の通り。遺骨を手元に置いたり散骨したりする場合は、改葬ではなく墓じまいとなる。後で納骨する場合、火葬証明書が必要になるので、(4)以降の手続きは自治体などに確認を。

親族への相談、丁寧に

 改葬費用の相場は、総計50~150万円とされる。新たな墓に100~200万円、納骨堂なら30~150万円と、納骨場所によって増減する。

 他に現墓管理者が寺院の場合は離檀料、墓から魂を抜く法要の布施、石材店に払う墓石撤去・区画整理費なども必要になる。前述の男性は、全部で約200万円かかった。

 吉川さんは「情報収集し多様な選択肢から、どんな弔い方が自分たちに合うのか、予算や場所を含めしっかり検討してほしい」と強調する。

 民法の規定では、墓を管理する祭祀(さいし)承継者に決定権があるが、家族や親戚との意見のすり合わせは、丁寧に行いたい。「他にも墓参りしている人がいるかもしれない。一緒に話し合い考え方を共有すれば、禍根を残さずに済む」とアドバイスする。

 ただ、新型コロナウイルスの影響で、人々の意識に変化も。吉川さんは「遠距離移動が制限され、オンライン法要や墓掃除代行サービスが身近になった。サービスを利用して、墓じまいせず従来通り墓を維持しようと考える人も出てくるかもしれない」と推測する。

永代供養墓の選択も

 全国石製品協同組合(東京)が2019年にインターネットで改葬・墓じまいをした約110人に理由を尋ねたところ、「継承者がいない」が48.6%と最多で、次いで「墓が遠い」が29.4%だった。新たな納骨場所は永代供養墓が27.5%、新しい墓が26.6%だった。

 こうした現状を受け、境内に永代供養墓を建てる寺院もある。

 仙台市若林区の昌林寺は昨年5月、合葬・合祀(ごうし)・永代供養塔「みんなの塔」を建てた。檀家(だんか)から申し込みが10件ほどあり、これまで預かっていた遺骨を含め、約60の遺骨を納めた。

 「遠方の子どもに迷惑を掛けたくない」「独身で墓を守る人がいない」などと相談されることが多くなり、檀家と約2年間協議して建立を決めた。

 松山宏佑住職(75)は「供養の大切さを伝えるのが寺の使命。生涯未婚率の増加や少子化といった社会の流れは変えられないが、寺で永代供養できれば、みんな安心できるし、寺の維持にもつながる」と話す。

昌林寺が建立した「みんなの塔」
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