<とびらを開く>まつお文庫 年代を問わず夢中に

読み聞かせに聞き入る利用者
文庫では読書や工作など思い思いに過ごすことができる

 仙台市若林区の住宅地にある「まつお文庫」は、自宅を開放して本の貸し出しや遊びの場の提供をしている家庭文庫です。かつて高校教師だった松尾福子さんが1977年に始め、今年で44周年を迎えました。「きっかけは、教師時代に読んだ家庭文庫に関する一冊の本。始めてみたら楽しくて仕方がなく、本当にあっという間だった」と松尾さんは振り返ります。蔵書数は開始時の約200冊から今では9000冊以上に。以前は子どもの利用が大半でしたが現在は大人も多く、近隣のみならず多賀城市や岩沼市から通う家族もいるそうです。

 開放日は基本的に週2回、午後の3時間。取材でうかがった土曜は親子連れなどが次々訪れ、気になる本を手に取ったり、おしゃべりをしたりと、それぞれの時間を過ごしていました。本の読み聞かせもあり、子どもも大人も真剣に聞き入りました。最後にみんなで手遊び。本で囲まれた空間が笑い声でいっぱいになりました。

 「ここに来ると優しい気持ちになれる。心があったかくなる」。この日、読み聞かせを担当した利用者の中村尚子さんは、娘が子どもの頃、そう話したことが今でも忘れられません。同じく利用者の高橋恵子さんは「誰でもいつでも受け入れてくれる松尾さんの人柄と文庫での多くの出会いが、通う大きな理由」と話してくれました。

 2人のように子どもが成長した後も通う人は多く、大人にとっても大切な場所になっているようです。

 文庫ではいくつか行事もあり、無理のない範囲で利用者に手伝ってもらうそうです。「皆さんの支えがあるからできる」と松尾さん。東日本大震災時は、おもちゃを利用者と一緒に手作りし、本や他の遊び道具と共に避難所などに届け、現地で遊ぶ活動もしました。

 ここ数年は少子化に加え新型コロナウイルス禍もあり、子どもの利用は少なくなっているそうです。松尾さんは「いくら子どもが減っても、とにかく続けていきたい」と話します。

 「私はただ、ここにいて見守っているだけだけれど」と謙遜する松尾さん。その穏やかで優しいたたずまいが年代を問わず多くの人を引き付け、地域で長年親しまれている理由なのではないかと感じました。(NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター 鶴巻さやか)

◎参考情報
まつお文庫
開放日 水、土曜の午後3~6時(第2土曜は休み)、誰でも無料で利用できる
連絡先 022(231)2712
ブログ https://blog.goo.ne.jp/matuobunko

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