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イノシシわな形状変更案に待った 宮城の猟師「駆除できなくなる」

里山を駆け回るイノシシの群れ。駆除するわなの形状見直しで異論も出ている=宮城県亘理町

 「このままでは繁殖適齢期のイノシシがくくりわなで捕獲できず、獣害を止められない」。宮城県で有害鳥獣駆除に当たる猟友会員から河北新報社に憤りの声が寄せられた。きっかけは、くくりわなの形状変更(縮小)を呼び掛ける全国組織の大日本猟友会(東京)の提言。わなの形状が駆除にどう影響するのか。現場の事情を探った。

楕円か真円か

 くくりわなは鳥獣保護管理法の施行規則で、「輪の直径が12センチ」と規定されている。環境省は2007年度になり、この12センチの計測方法を都道府県に通知。円の最大径と直角に交わる線を指すと記載したため、最大径が18~26センチの楕円(だえん)形のわな製品が出回っている。

 大日本猟友会はこうした現状を問題視。9月1日発行の会報「日猟会報」で、通知によって規定が緩められたとして、わなを12センチの真円にするよう訴えた(イラスト参照)。

 同会の担当者は「(規定より大きな形状のため)クマを誤って捕まえる錯誤捕獲が多発しているし、人間の子どもが掛かる可能性もある。会員は本来の形状のくくりわなか、箱わな、銃で捕獲してほしい」と促す。

真っ向から反論

 一方、50年以上活動してきた宮城県蔵王町遠刈田猟友会の前会長佐藤秀一さん(79)は大日本猟友会の主張に真っ向から反論する。

 理由はイノシシ特有の蹴爪(けづめ)の位置。ひづめとほぼ直角に横方向へ伸びており、繁殖可能な体重50キロ以上の成獣は足の横幅が12センチを超える。わなの枠内に収まらず逃げてしまうという。佐藤さんは「わなの形状が会報通りに変更されれば、どんどん繁殖してしまう」と危惧する。

 佐藤さんによると、わなで足全体をくくるイノシシと違い、クマは指1本でも引っ掛かるので最大径を縮めても意味がないという。

 大日本猟友会が活用を求める箱わなは、警戒心が強いイノシシの成獣がなかなか入らないとされる。昔のように集団で獲物を追い込み、銃で仕留める巻き狩りをするマンパワーもない。佐藤さんはクマの錯誤捕獲の多さを認めつつ「12センチの真円になったらイノシシが全く捕れなくなる。猟をやめる人が続出するだろう」と強調する。

現行規定下のくくりわなの一つ。短径が12センチで、楕円形をしている

環境省「見直しは必要」

 環境省は「07年度は今ほど極端な楕円形の製品が出ると想定していなかった。錯誤捕獲も懸念されるし、何らかの見直しは必要」(野生生物課鳥獣保護管理室)との立場だ。

 深刻化する獣害を食い止めようと、環境省は13年度にイノシシの個体数を10年間で半減させる目標を掲げている。担当者は「捕獲数が減っては矛盾する。さまざまな意見を聞き、どうするか判断したい」と話す。(桜田賢一)

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