巨大津波の痕跡は被災者にとって大切な人の命を奪い、暮らしと街を徹底的に破壊した災害の生々しい記憶と重なる。
一方で、未曽有の災害の教訓を後世に語り継ぐ遺産としての価値も無視できない。地形、地質など地球活動の痕跡を地域振興に役立てるジオパーク(大地の公園)の学習拠点「ジオサイト」に活用できないだろうか。
河北新報社の提言「地域再生ビジターズ産業の創出」では「被災者の心情に十分配慮した上で震災遺構を保存し、教育・観光資源として活用すれば鎮魂と復興の象徴になる」と提案している。
震災から1年半が過ぎても、気仙沼市鹿折地区には県内外から多くの人たちが見学に訪れ、手を合わせていく。
視線の先にあるのは、全長約60メートルの大型巻き網船「第18共徳丸」(330トン)。津波で流され、海岸から約600メートル離れたJR鹿折唐桑駅近くに打ち上げられたままだ。
市は、共徳丸を保存できるよう一帯を鎮魂のための復興祈念公園として整備する構想を掲げ、地元住民の理解を得るため意見交換を重ねている。
「理解が得られるなら資料館や研修施設を併設した公園として整備したい。もし見るのも嫌だというなら箱に入れるなどの方法もある」
13日夜、菅原茂市長は地元の自治会長らを前に言葉を選びながら説明した。「つらい記憶を思い出す」との声に配慮し、保存手法にも言及した。
「私たちの子どもの代は津波を忘れないが、その先は忘れてしまうかもしれない」と、震災遺構の存在価値を菅原市長はこう表現した。
「街の再建の妨げになる」「悪夢がフラッシュバックする」などの理由で、被災した建造物、構造物の大半が既に解体・撤去されている。
横倒しになった石巻市の缶詰形巨大タンクが6月末に解体され、同市雄勝町の公民館に乗り上げた大型観光バスも震災1年を前に撤去された。
保存に向けての検討が進められているのは、4階部分まで津波に襲われた「たろう観光ホテル」(宮古市)や陸前高田市の道の駅「高田松原」などごく一部だ。
町職員ら多くが犠牲になった宮城県南三陸町の防災対策庁舎の解体をめぐっては、町民有志が「大惨事を後世に語り継ぐ場として保存してほしい」と町に陳情した。一方、遺族からは「庁舎が残っていては前に進めない。解体方針を貫くべきだ」との強い声が上がる。
被災者や地域が震災遺構の問題を考えるには、1年半という時間は短過ぎるのかもしれない。
震災遺構をめぐる議論を、広島市の映像作家田辺雅章さん(74)は「原爆ドームとオーバーラップする」と話す。
かつて田辺さん宅は、原爆ドームと呼ばれるようになる広島県産業奨励館の隣にあった。両親と弟を失い、自身も被爆した。「早く倒壊すればいい」と、ドームから目を背けて生きてきた。
現在、コンピューターグラフィックスで爆心地の復元に取り組む田辺さんは、気持ちの整理が付くまでに50年以上かかったという。「遺構の存廃は被災者が考える問題だが、半世紀後は(残して良かったと)理解してもらえるはずだ」と語る。
震災遺構の保存活動に力を入れる減災・復興支援機構(東京)の木村拓郎理事長は「南海トラフ地震に備えるため、震災遺構の役目は重要だ。被災者にはつらいだろうが、復興支援への恩返しとして保存を検討してほしい」と訴えている。
被災地では今も「忘れてはいけない教訓」と「忘れたい悪夢」のはざまで、住民の心情は揺れ動いている。
(東北再生取材班)
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