東北大片平キャンパス(仙台市青葉区)の研究棟の一角に、高さ2~3メートルはある円筒型の実験装置が3台据え付けられている。いずれも強力な磁石を使い、物体の断面を撮影する磁気共鳴画像装置(MRI)だ。
「劣化すると電解液がドロドロになる。血液と一緒だ」と東北大多元物質科学研究所長の河村純一教授(固体イオン物理)。研究グループは3年前、世界で初めてリチウムイオン電池のMRI撮影に成功。劣化した電解液に気泡が発生し、ゲル化した状態をとらえた。
スマートグリッド(次世代送電網)などの技術の核にある蓄電池のうち、リチウムイオン電池は最も普及が進んでいる。
しかし充放電を繰り返すうち発熱したり、フル充電できなくなったりして劣化するメカニズムは、実のところ詳しく分かっていなかった。河村教授は「長寿命化や低コスト化、その先にある新たな蓄電池の開発に貢献したい」と意欲を燃やす。
リチウムイオン電池は携帯電話やパソコンのバッテリーから開発競争が始まった。鉛やニッケル水素、ナトリウム硫黄など他の蓄電池と比べエネルギー密度が高く、小型化できる長所がある。
近年はハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)の車載電池として開発が進む。
PHV、EVは、建物内部のエネルギー需給を管理・最適化したスマートハウスの余剰電力を有効活用できる。車から住宅への逆充電が本格化すれば「動く蓄電池」として利用範囲が格段に広がり、生活シーンが一変する可能性を秘める。
現状では価格が割高で走行距離が限られることに加え、充電に時間がかかるなど難点が多い。リチウムイオン電池の性能向上と、スマート化の進展は切っても切れない関係にある。
国家戦略会議(議長・野田佳彦首相)のグリーン成長戦略は、2020年の世界の蓄電池市場規模を20兆円と算出。その5割を国内企業が獲得する目標を掲げた。
現在のシェアは2割に満たないが、戦略会議はまずは車載用の需要が見込めるリチウムイオン電池の性能向上を図り、それに代わる次世代型蓄電池の開発につなげる-という工程表を描く。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、川崎市)蓄電池技術開発室の細井敬室長は「蓄電池のシェアを伸ばしていくためには、例えば病院のような公的施設で蓄電池設置を原則化するなど、思い切って分散型エネルギー体系への移行にかじを切る覚悟がなければならない」と語る。
河北新報社の提言「地域に密着した再生可能エネルギー戦略」は、原発に象徴される大規模集中型エネルギー体系への依存から脱却し、身近な太陽光や風力、地熱など複数の電力を利用する小規模分散型エネルギー体系への転換を促している。
「気象条件などに左右される再生可能エネルギーは、発電の安定性がネックとなる。電気をためられる時にためて、使いたい時に使える高効率の“夢の蓄電池”を一日も早く完成させてほしい」
より発電量の大きな風車の研究に取り組む九州大応用力学研究所長の大屋裕二教授(風工学)は「蓄電池が高性能化すれば、再生可能エネルギー分野で日本が世界を制覇できる」と力説した。
再生可能エネルギーの潜在能力が極めて高い東北で、蓄電池技術が向上・普及すれば、車の両輪となって新しい社会のエネルギー体系をけん引することができる。
(東北再生取材班)
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