「防災頭巾は本当に役に立つの?」。仙台市太白区の50代の主婦から「読者とともに 特別報道室」に疑問が寄せられた。宮城県内の小学校でも徐々に浸透してきたようだが、頭を守るならヘルメットの方が良い気もする。実際のところはどうなのか。専門家に聞いた。(編集局コンテンツセンター・佐藤理史)
まずは現状を見に、仙台市大和小(児童533人)を訪ねた。児童は椅子の背もたれ部分から頭巾を取り出し、さっと頭にかぶってみせてくれた。5年河原木美羽さん(11)は「年2回ほどの避難訓練で使う。普段はクッション代わりになる」と教えてくれた。
「防空頭巾再び登場 仙台の小学校で大モテ」
歴史を調べると、1978年宮城県沖地震の1年後、河北新報にこんな見出しの記事を見つけた。大和小を含む市内の一部の小学校が地震などの災害に備えて、戦時中に空襲から身を守る防空頭巾を取り入れ始めた、と伝える。
市教委や学用品業者の話を総合すると、70年代以降、東海地震への備えで関東や東海を中心に普及した。県内では2003年三陸南地震や11年東日本大震災を契機に次第に広まった。関東圏から転勤してきた保護者の指摘で導入するケースも少なくなかったようだ。
普及した地域は偏りが見られる。文科省の学校安全調査によると、19年3月末時点で防災頭巾やヘルメットを備蓄している公立学校(中学高校なども含む)は仙台で60%、仙台を除く宮城県は45%。全国(32%)より高く、東京(74%)や静岡市(78%)より低い。東北は青森13%、岩手11%、秋田5%、山形8%、福島18%と浸透していない。
投稿を寄せた女性は18年前、子どもが入学時に購入を求められた。「周りが持っているのに、買わないのはかわいそうかなと思って買ったけど、戦時中の名残みたいで正直、納得いかなかった」と話す。市内の業者によると、防災頭巾は2500円前後、椅子の背もたれに収納するカバーは1200円程度だという。
実際に頭を守る効果はどの程度か。国民生活センターの試験(2010年)によると、おもり5キロを高さ10センチから落下させた場合、衝撃は5割程度、製品によって8割ほど抑えられた。その上で「ヘルメットは頭巾よりかなり高い衝撃吸収性を有する。頭巾は書籍などの軽量な落下物からの保護用である」と補足する。
仙台市防災・減災アドバイザーの折腹久直さん(43)は「確かに落下物から頭を守る機能だけを見れば帽子以上ヘルメット未満だが、頭だけでなく顔や肩まで、火災の火の粉や飛散したガラスから守れるのは利点だ」と説明する。
平常時と非常時を分けず、日頃から災害に備えている状態にしておく「フェーズフリー」という概念が近年、重視されるという。カセットコンロや自転車通勤と並び、防災頭巾は好例だとする。東日本大震災時に宮城県山元町の小学校で、頭巾が防寒具やまくら代わりとしても効果を発揮した実例もある。
「だったら、なぜ先生や消防士はヘルメットをかぶっているの? 災害時に自由に選べるとしたら、どちらを選ぶの?」と異を唱える専門家がいる。
防災に関する多数の著書がある危機管理教育研究所(東京)の代表国崎信江さんは「科学的知見に基づき、命を守ることを最優先に考えれば、時代遅れの頭巾が今も存在している理由が分からない」と主張する。
ヘルメットは3000~5000円で、価格は大差ない。防炎たれ(しころ)付きなら火の粉なども防げる。国崎さんによると、保管場所や装着の難しさは工夫次第で克服できるとして、横浜市などで頭巾からヘルメットに切り替える動きが出ているという。
衆院は2017年、本会議場に折り畳み式のヘルメットを配備した。1986年から防災頭巾を備えていたが、強度を疑問視する声が上がり変更した。
国崎さんは「頭巾でなくヘルメットだったら守れたかも、はあってはならない。東北は頭巾があまり普及していないので、ぜひ最初からヘルメットを導入してほしい」と訴える。
国はどちらとも判断を示さない。文科省男女共同参画共生社会学習・安全課は「多様な災害リスクは地域によって異なる。一律に決めるより、各自治体に任せた方が良い」と話す。
仙台市教委教育指導課は「ほとんどの小学校が頭巾を採用しているようだが、ヘルメットは聞いたことがない。各学校の判断であり、実態は把握していない」と言う。学校防災のアップデートはどこが責任を持つのか、曖昧な現状も浮かび上がる。
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