<2021年 宮城を振り返る>減り続けるコメ需要 生産者へ思いを寄せたい

 東日本大震災から10年となった一年が暮れる。被災地は新たな歩みを進め、延期された「復興五輪」が新型コロナウイルス下で開催された。コロナ下での選挙も相次いだ。医療、事故などのニュースも。現場で取材した記者が振り返る。

鎌で稲刈りをする「仔虎」の社員ら=10月、栗原市志波姫

 「あっため水」の話を思い出した。

 あっため水とは、雪解け水を天日で温めた水のこと。山間地のコメ農家が、田植え後の苗が育つように考えた冷涼な条件不利地の知恵だ。

 宮城県大崎市の「鳴子の米プロジェクト」の総合プロデューサーで民俗研究家の結城登美雄さん(76)に聞いた、鳴子地区の中学校でのエピソードで知った。

 田んぼを自転車でふらふら行き来していた近くの農家のおじいちゃん。中学生たちは認知症かと思っていたが、実は苗が元気に育つよう毎日、あっため水の具合を確認しに田んぼを見回りしていた。

 結城さんの授業でその話を聞いた子どもたちは、自分たちがおじいちゃんのためにできることを考え、あっため水、コメ作りの話を家族に「伝える」ことを実践した。後日、子どもたちの食卓には、鳴子のコメが並ぶようになった。

 今年10月、米価下落の取材で栗原市志波姫の専業農家佐藤弘毅さん(66)を訪ねた。「見てほしいものがある」と言われ、田んぼに行くと20人ほどの若者が鎌を手に稲刈りをしていた。

 仙台市などで焼肉店を展開する「仔虎(ことら)」の社員たちが、研修に来ていた。仔虎では、佐藤さんから年20トン前後のコメを購入する。

 社長の中村弘志さん(42)によると、研修は5年ほど前に始めた。「接客時に農家の思いを伝え、耳や心でも味わってもらおうと考えた。実際、お客さまに喜ばれている」と語った。この時に思い出したのが、あっため水の話だった。

 今回の米価下落の要因として政府や全農は、人口減、コメ離れ、新型コロナによる業務用米の需要減などを挙げる。今後も、年10万トンペースで需要が減るとの暗い見通しも聞く。

 政府や全農のこのような話を聞いても、農家の姿はなかなか浮かんでこない。でも、鳴子の中学生や仔虎の取り組みを聞くと、農家がぐっと身近になる。佐藤さんは「食の大切さが伝われば、コメの消費は確実に増える」と訴える。

 知ること、食べること、伝えること。われわれ消費者ができることは決して少なくない。
(栗原支局・門田一徳)

[メモ]2021年産米の概算金(60キロ)が、県主力品種のひとめぼれで9500円と20年産から3100円下落した。政府は価格維持策として15万トンのコメの市場切り離しを決定。県内ほとんどの市町村は10アール当たり2000円~1万円の生産者支援金の交付を決めた。

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