「焼きハゼ乗せる」だけじゃない! 仙台雑煮を深掘りしてみた

 焼き干しにしたハゼでだしを取るのが仙台の雑煮、と聞いたものの、関西出身で仙台暮らし通算5年目の記者は食べたことがない。先輩に聞くと「昔はやっていたけど…」「うちは鶏だし」「妻の実家はホヤ」と三者三様だった。正月の定番を深掘りしてみた。
(編集局コンテンツセンター・藤沢和久)

仙台市の農家で元日朝に食べられていたお膳のサンプル。雑煮(右手前)は焼きハゼが乗っている=仙台市宮城野区の市歴史民俗資料館

身近な魚、ハレの日に特別感

 思い描く雑煮は、宮城の食文化の保存伝承に取り組む「みやぎの食を伝える会」が編集した「ごっつぉうさん―伝えたい宮城の郷土食」(2005年)に載っていた。焼きハゼでだしを取り、根菜の千切りやしみ豆腐、焼いた切り餅の上に、ハゼやはらこ(いくら)をあふれんばかりに飾る。

 会のメンバーで、宮城県大河原町の総菜店オーナー小畑美枝子さん(62)は「昔は一番大きく、煮崩れていないものを当主のわんに乗せる習わしだった」と説明する。ただ、ハゼの生産者が減って値段が高くなり、店ではここ数年、提供していない。

 仙台市歴史民俗資料館によると、ハゼの雑煮は主に産地の松島湾周辺、江戸時代に魚の流通ルートだった塩釜から仙台にかけて見られるという。学芸室長の畑井洋樹さん(49)は「手に入りやすかった魚を保存し、ハレの日に特別感を出したのではないか」とみる。

 だしを取ったハゼを必ず乗せるわけではなく、神棚に供えるものや当主だけの家もあった。ハゼが乗る雑煮が仙台の代表になったのは、昭和50年代の婦人雑誌に見栄えがする写真が載ってからだという。

 同じ仙台藩でも、若林区河原町ではアユ、名取市閖上ではシタビラメのそれぞれ焼き干しを使った例があった。石巻周辺では干したホヤやハモ、山沿いではヤマドリやキジでだしを取っていた。

凍らせた「ひき菜」が共通

 対照的に宮城県内の多くに共通しているのは野菜だ。千切りにしたゴボウ、ニンジン、ダイコンなどを下ゆでして凍らせた「ひき菜」を使う。三が日に刃物を使わないよう年内に用意し、寒風にさらしていた。凍ることで甘みが出て、味しみも良くなる。

 畑井さんは「焼きハゼの雑煮は全国的に珍しく、取り上げられるようになったのだろう」と分析。「地域や家庭によって違いがあるのは当然で、『これが正解』というものはない」と結論付けた。

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