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<311次世代塾>「人の口で伝承」大切/第5期第13回、14回詳報

仙台市職員ら記録、朗読

グリーフケアについて説明する菅原さん明する菅原さん
震災時の市職員の体験談などを伝えるチーム仙台のメンバー

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第5期は2022年1月15日、第13、14回講座を仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパスで行った。学生16人が受講し、悲嘆を抱える震災の遺族を支えるグリーフケアや、自治体職員の震災体験を記録し、朗読や映像などで後世に伝える取り組みを学んだ。

 東松島子どもグリーフサポート(東松島市)代表理事の菅原節郎さん(71)と、仙台市職員らの自主グループ「Team Sendai(チーム仙台)」が講師を務めた。

 「遺族その後 悲嘆ケアの取り組み」と題して話した菅原さんは震災当時、東松島市議だった。安否確認で市内を車で移動中に津波に遭い、民家に逃れて助かった。揺れの後に自宅で妻郁子さん=当時(52)=、長男諒さん=同(26)=と合流。近所の高齢者の避難支援を頼んで分かれた後、2人は津波で亡くなった。

 避難者の世話に追われながら、自責の念と罪悪感にさいなまれた。一方で津波で親を亡くした子が市内に三十数人いると知り、震災2カ月後の2011年5月に子どものグリーフケアを始めた。子どもと親に寄り添う活動は、自身の心の救いにもなったという。

 「今も癒えない傷を持ち続ける人は多い。誰も取り残さず息長く活動したい。被災地に関心を持ってもらうことが勇気づけになる」と訴えた。受講生は大切なものや人を折り紙に書いた後、破ってちぎることで「喪失」などグリーフを学ぶプログラムを体験した。

 チーム仙台は「人の口から人の心に伝える」のテーマで、市職員や防災士らメンバー6人が講話とワークショップを実施した。震災体験を聞き取って記録に残す「災害エスノグラフィー調査」に基づく伝承活動を紹介。メンバーの西坂光さん(34)は「人が介在して伝え続けることを大事に活動している」と説明した。

 窓口業務の傍ら連続28時間の避難所対応に追われた区役所職員の体験談の朗読や、震災廃棄物の処理を担当した職員のインタビュー映像などを通じ、受講生は自治体職員が直面した震災の実態を疑似体験した。

 受講生からは「何時間も寝ずに働いたと聞き、もっと柔軟に対応できる仕組みが必要だと思った」「当時の緊張感や思いが伝わり、状況を具体的にイメージできた」との意見や感想が出た。

 発起人の市職員鈴木由美さん(59)は「自分が震災を直接体験していなくても、大切な人の命を守りたいなら、震災について学んだことを自分の言葉で伝えてほしい」と強調した。

<受講生の声>

■苦しい思い実感
 震災で家族を亡くした菅原節郎さんの話を聞き、グリーフケアの疑似体験をして、大切な人を失った多くの人が苦しい思いをしてきたことを実感しました。二度と誰にも同じ思いをしてほしくありません。学んだことを自分も伝えたいと思います。(仙台市青葉区・宮城教育大1年・村上真綺さん・18歳)

■朗読の印象強く
 震災発生時の自治体職員の話を聞いたのは初めてです。震災直後の様子や大変だったことなどの体験談が、朗読という手法を使うことでとても印象強く頭に入ってきました。チーム仙台の取り組みを通して、震災を伝承することの大切さを改めて感じました。(仙台市太白区・尚絅学院大2年・行方佑里さん・19歳)

<メモ>

 311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

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