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<311次世代塾>被災体験 わがことに/第5期修了詳報

参加人数絞り現地視察

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」の第5期は全14回の講座を終え、114人が修了した。新型コロナウイルス感染予防の一環で、2022年3月12日に予定していた修了式は中止し、大学を通して修了証を交付した。

 新型コロナウイルスの影響で、5、6、8月はビデオ会議アプリで授業を行い、収録動画も配信した。宮城県南三陸町にあった公立志津川病院の医師、石巻市の福祉施設の管理者、南三陸町戸倉小の元校長がそれぞれ震災時の被災状況と避難行動を説明。9月は震災後に学習支援に取り組んだNPO法人の代表理事が講師を務めた。

 現地視察は参加人数をバスの定員の半分に絞って実施した。7月は気仙沼市の東日本大震災遺構・伝承館、10月は仙台市の震災遺構荒浜小と名取市閖上地区、11月は石巻市の震災遺構大川小、12月は南三陸町の旧防災対策庁舎を訪ね、各地で語り部の被災体験と復興の歩みを聞いた。

 今年1月は仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパスで、対面式授業を行い、遺児を支えるグリーフケアと、仙台市職員らによる震災体験の伝承活動を学んだ。

 第5期は宮城県内を中心に東北の10大学の学生144人が登録した。第6期は5月の開講を予定する。募集要項と講座の概要は後日、発表する。

<受講生の声>

■動ける人目指す
 講師は皆、避難訓練の重要性を訴えていました。防災の知識を取り入れるだけでなく、行動に移せるよう日ごろから活動し、災害時に動ける人になりたいと思います。学んだことを生かし、町内会など地域の防災・減災活動にも積極的に取り組みたい。(宮城県利府町・東北工大1年・早坂至恩さん・19歳)

■人の介在が大切
 講師の話に共通する言葉は「人」。被災地を訪れ、以前の生活や人のつながりの温かさを知りました。伝承は人が介在することが大切です。現地に足を運び、被災者の声を聴いて、自分も命の大切さを伝えられるかもしれないと思うようになりました。(仙台市青葉区・東北大1年・庄子沙也加さん・19歳)

■記憶を語り継ぐ
 震災は怖いと漠然と不安を抱えるのではなく、どう行動したら命を守れるのか、考えるようになりました。被災した子どもの不安は、震災時に子どもだった私たちがよく知っています。子どもたちとの交流を通じ、震災の記憶を語り継ぎたいと思います。(仙台市太白区・尚絅学院大2年・中島優美佳さん・20歳)

■共助の精神学ぶ
 震災体験のほか、人と海がどう共生するかなど津波被災地の現状と復興の課題を学びました。講師に共通したのは「自分の命は自分で守る」という教訓です。避難所や仮設住宅では「共助」の精神で周りの人と助け合うことが大切だと考えるようになりました。(仙台市太白区・東北福祉大1年・水本怜さん・19歳)

■複雑な胸中思う
 大川小で講師が「悲劇の場所と言われるが、卒業生には母校です」と話すのを聞き、同窓生の複雑な胸中に思いを巡らせました。東京電力福島第1原発事故で出身地福島を「危険な場所」と言われて、自分が抱く悲しみや葛藤と似ているかもしれません。(宮城県柴田町・仙台大3年・中川凜さん・21歳)

■命守れる教員に
 大川小で語り部の講話を聞き、子どもの命を預かる教員は備えを徹底しなければならないと学びました。大事な人や物を一瞬で失う悲しみ、命を守る大切さも教わりました。教員志望です。教員になったら地域がどんなところか、歩いて確認します。(仙台市若林区・宮城教育大1年・国吉将樹さん・19歳)

■経験役立てたい
 南三陸町の視察で復興祈念公園の丘に登り、旧防災対策庁舎の曲がった鉄骨を見て津波の高さと威力に驚きました。自分だったらどうするか、わが身に置き換えて考えながら受講しました。当事者に学んだ貴重な経験を、今後に役立てたいと思います。(仙台市青葉区・宮城学院女子大3年・菅野朋夏さん・21歳)

■医師の言葉心に
 南三陸町にあった公立志津川病院の医師が語っていた「家族の安全が確認できなければ業務に集中できなかった」との言葉が印象的でした。自己犠牲がたたえられがちですが、自分や家族を守った上で他人を助けることが大事だと教えられました。(名取市・東北医科薬科大1年・三浦綾乃さん・21歳)

<メモ>

 次世代塾は「311次世代塾推進協議会」が運営する。構成団体は河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

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