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<311次世代塾>まず自分の命守ろう/第5期第1回詳報

元公立志津川病院医師・菅野武さん オンライン講座

津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町志津川の中心部。左下の5階と4階の2棟連なる建物が公立志津川病院=2011年3月18日
菅野武さん

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第5期は2021年5月15日、第1回講座をオンライン方式で開き、宮城県内を中心とする大学生132人が受講した。

 講師は東北大病院総合地域医療教育支援部助教の菅野武さん(41)が務めた。震災発生時は宮城県南三陸町の公立志津川病院の医師で、「被災の現場」をテーマに、被害状況や震災後の取り組みを振り返った。病院では震災で入院患者72人、看護師ら3人が犠牲になった。

 医療スタッフはあの日、揺れが収まると、患者の上階への搬送に取り掛かった。約40分後、津波が押し寄せ、あっという間に病院4階の天井付近に迫った。菅野さんは、4階の患者を担架で搬送中に津波に襲われ、5階に逃げ込んだ。

 大津波が引いた後、4階の病室に戻った。生存者を救出したものの、「下の階に下りる判断が正しかったか分からない。再び同じ高さの波が来たら救助中に死んでいた。皆さんはまず自分の命を守ってほしい」と述べた。

 避難した5階会議室に医療設備はなく、患者7人が低体温症などで亡くなった。「川の氾濫や津波被害が想定される地域は、上の階への垂直避難を選ぶ可能性がある。逃げる先に物資や機材を準備することが大事だ」と訴えた。

 震災後に取り組んだ震災ストレスによる突発性潰瘍の研究や、災害時の人材育成プロジェクトなどの活動を報告。「困難を乗り越える力を付ける」「災害から学んだことを伝え残す」ことの重要性を説いた。

 次代を担う大学生に「直接経験していなくても人から聞いて学べる。次の10年に何ができるか主体的に考えてほしい」と期待した。

 質疑応答で外国人や転勤族への継続的なケアの手法を問われると「オンラインで支援する動きもある。大学生も外国人や弱者をサポートできる」と述べた。

 「震災の教訓や防災を子どもにどう伝えればいいか」との質問には「知らない誰かの話でなく、私やあなたが被災したらどうするかと問い掛ければ、自分に寄せて考えられる」と助言した。

<受講生の声>

■患者と共に歩む
 人を助けるためにも自分の命を守ってほしいという訴えが胸に刺さりました。患者の救助も治療も自分の身を守らないとできません。菅野さんの話を聞き、医学生として患者の人生を支え、患者と共に歩める医師になりたいという思いを強くしました。(仙台市・東北医科薬科大1年・小川泰佑さん・21歳)

■人支える存在に
 命を守ることの大切さを改めて実感しました。「自分だけでなく人のために『いのち』を過ごす」という言葉が印象的でした。震災から学び、未来に伝えることで被害を防げます。自分にできることを常に考えて行動し、人を支えられるようになりたいです。(宮城県亘理町・東北福祉大1年・加茂柚月さん・18歳)

<メモ>

 311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

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