<311次世代塾>迅速避難 訓練の成果/第5期第2回詳報
石巻・介護施設管理者 石山うみかさん オンライン講座
東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第5期は2021年6月12日、第2回講座をオンライン方式で開いた。石巻市の介護福祉施設「めだかの楽校」管理者の石山うみかさん(44)が要援護者の避難をテーマに講話し、大学生110人が受講した。
楽校を含む「めだかグループ」の施設は同市南浜町にあり、海から400メートルしか離れていなかった。震災発生のあの日、地震が収まると、職員は津波警報を待たず利用者を車に分乗させ、避難を開始。渋滞に遭うことなく、約30分後、利用者47人と職員30人、住民10人が高台への移動を終えた。
石山さんは「迅速に避難できたのは、日頃の準備と訓練の結果だった」と振り返った。グループは宮城県沖地震に備え、2003年から年4回の防災訓練を実施。職員1人で利用者1人を運べるおんぶひもを使うなど避難の効率化を図り、乗車までの時間を当初の20分から10分に短縮した。
素早く車を出せるよう、職員は前向き駐車を徹底したほか、利用者に応じた乗車リストを連日作成。避難を想定して利用者が自ら立ち上がったり、歩いたりできるように促す運動も日常の活動に組み込んだ。
石山さんは反省点も挙げた。高台に避難後、寒さに備えて職員5人が毛布などを取りに施設に戻り、津波に巻き込まれた。幸い全員が助かり、施設は11年8月に事業を再開したが、「犠牲者がいたら再開できたか分からない。避難後は安全が確認できるまで戻ってはいけない」と訴えた。
施設は14年4月に内陸の同市蛇田地区に移転した。質疑応答で、学生から介護福祉施設の立地条件を問われると「車避難の必要がない場所にしようと、移転先を決めた。立地は災害発生時を考えて選ぶべきだ」と述べた。
震災後に設けた避難ルールについては「現在は津波ではなく、大雨による北上川の氾濫を想定したマニュアルを作り訓練している。高台の別の施設に早めに移動する決まりだ」と答えた。
石山さんは「震災時は『私に付いてきて』『逃げて』と声を出す人が重要だった。代表者やリーダーでなかったとしても、皆さんには声を出す勇気を持ってほしい」と呼び掛け、講話を締めくくった。
<受講生の声>
■入所者対応学ぶ
要介護者への対応など介護職に携わる人の問題から、防災全般まで貴重な話を聞けました。日々の生活行動を避難に生かせるように組み込む防災は、誰でもできる上、緊急時に役立つ点で不可欠だと感じました。石山さんの教訓を今後に生かしたいと思います。(仙台市青葉区・東北大4年・広田哲士さん・22歳)
■日頃の意識大事
震災から10年、防災意識が薄れていると感じていた中、高齢者らが無事避難した貴重な話を聞き、改めて災害への備えが大切だと学びました。地震が起きたらすぐ避難する意識をみんなが持てるよう、自分も身近なところから発信しようと思います。(宮城県七ケ浜町・宮城学院女子大3年・仁田成海さん・20歳)
<メモ>
311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。
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