河北抄(1/24):店内に漂うだしの香りに空腹感が高まった。…

 店内に漂うだしの香りに空腹感が高まった。注文した、一推しというロースカツ丼(980円)が待ち遠しい。

 仙台市青葉区大手町の「かつどんのかつどん家」。見覚えのある看板が浜口竜介監督の映画『偶然と想像』に現れ、薄暗いシアターで「あっ、あの店」と危うく声を上げそうになった。

 「何度か食べに来てもらったけど、撮影まで監督さんと知らなくて…」。初めて訪れた不覚を恥じつつ伺うと、接客の手を休めて松浦辰子さん(69)が「寡黙な方です」と人となりを話してくれた。

 東日本大震災の被災地を舞台にした作品の数々で知られる浜口監督。ベルリン国際映画祭銀熊賞の今作もオムニバスの第3話を仙台でロケし、なじみの店をそのまま登場させた。

 撮影は2020年夏。浜口監督からは特に指示はなく、一発でOKが出た。厨房(ちゅうぼう)に立つ「おじさん」役で自然体の演技を見せた夫の仲(とおる)さん(68)は「すごい映画に出ちゃったよ」と喜ぶ。

 出来たてのカツ丼は映画と同様、気取りのない優しい味わいだった。

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