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京都・二条城のクロマツ、なぜ伐採? 根の張り浅く、倒木の危険

幹の途中で切られたクロマツ。サクラに植え替えられる計画だ=1月19日、京都市中京区

 「二条城前の景観に合うクロマツを伐採するのはかわいそう」。二条城(京都市中京区)の東側に並ぶ街路樹30本余りの伐採を京都市が進めていることに、同区の70代女性から疑問の声が同市の京都新聞社に寄せられた。市によると、病害虫で樹勢が弱っているわけではないという。ではなぜ切っているのだろう。

 女性は昨年12月、散歩中に、枝ぶりの立派なマツが何本も幹の途中で切られていることに気付いた。その場で作業員に尋ねたところ「サクラに植え替えるため」と聞かされ、「元気な木を切る必要があるのか」と疑問を持ったという。

 市みどり政策推進室に取材すると、12月15日から1月下旬にかけて、二条城の門前の東堀川通(夷川-御池通)でクロマツ30本を含む街路樹34本の撤去作業をしたという。樹高9~18メートル、樹齢35~45年でマツとしては老齢とはいえないが、「植わっている花壇の幅が80センチしかなく、根の張りが浅い。大型台風などで倒れる恐れがある」と担当者。危険木対策で切ったとの説明だった。

 すぐ西側の堀川通の街路樹もクロマツだが、こちらは花壇の幅が1・5~2・5メートルあるため、倒れる危険はないという。

 マツは強風に弱い樹種なのだろうか。府立植物園(左京区)の樹木医によると「防風林として海岸沿いに植えられるように、マツは本来、風には強い」。ただコンクリートに固められた花壇に植えられた場合、「植物が生きて行くには不自然な状態」のため、根と幹のバランスが崩れると倒れる危険性はあるとする。

 「被害防止のために植え替えるという選択はありうる。ただ、木も生きており、『かわいそう』という市民感情はもっとも」(樹木医)。女性は「切るのではなく、添え木などで倒木防止ができなかったのだろうか」と残念がる。

 市は同じ東堀川通(上長者町通-御池通、約1・5キロ)でサクラ75本の植樹事業を2018年から進めており、マツの後にサクラを植える計画だ。「サクラは背が低く、花壇の幅が狭くても強風で倒れるリスクは低い」(同室)。加えて、マツは枝切りなどの管理コストが高く、財政難の市にとっては重荷だとも説明する。
(京都新聞提供)

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