「井上ひさし作品、今こそ大事」女優・渡辺えりさん思い出語る 山形・川西で吉里吉里忌

ステージで井上さん作詞の「ひょっこりひょうたん島」を歌い上げる渡辺さん(中央)
初めて公開された井上さんの未発表原稿に見入る来場者

 劇作家や小説家として活躍し、2010年に死去した井上ひさしさんの功績を顕彰する催し「吉里吉里忌2022」(実行委員会など主催)が10日、出身地である山形県川西町の町フレンドリープラザであった。8回目となる今回は親交があった山形市出身の俳優・演出家の渡辺えりさんが思い出を語った。

 満員の約700人のファンを前に、渡辺さんは井上さんから出演依頼を受けたものの、作品が完成せず上演中止になり平謝りされたエピソードなどをユーモアを交えて紹介。新型コロナウイルス禍やロシアのウクライナ侵攻などを挙げて「今生きていたらどういう戯曲を書き、何とおっしゃったのか」と思いをはせた。

 戦争と平和を問い続けた井上さんの多くの作品を紹介し「芝居をやることは反権力だと思っている」と共感。「井上さんの戯曲は今こそやり続けないといけない」と強く訴えた。

 最後に、井上さんが作詞したテレビ人形劇「ひょっこりひょうたん島」の主題歌も高らかに歌い上げた。

 井上さんが20代の時に書いたとみられる未発表作「うま――馬に乗ってこの世の外へ――」の原稿も同日、プラザ内の「遅筆堂文庫」で公開され、多くのファンが見入った。山形市の無職伊藤薫さん(72)は「何度も校正した跡があり、読みやすい筆跡と筆の遅さは若い時から変わらないと思った」と笑って話した。

 当初、公開は1日だけの予定だったが、当面継続するという。

ステージで井上さんとの思い出を語る渡辺さん

全作品の目録完成 蔵書保存の遅筆堂文庫 

 作家・劇作家の故井上ひさしさんによる著作の一覧が収録された小冊子が完成した。井上さんの作品を生涯にわたってカバーした目録は初めて。製作した山形県川西町の遅筆堂文庫は図書館や研究者への配布に加え、市販も含め検討している。

 A5判128ページ。小説や戯曲、エッセー集など全著作とみられる282冊のタイトルが五十音順で並ぶ。初版や文庫、英訳版の発行年が確認できるほか、雑誌などで発表された作品は初出の情報も参照できる詳細な内容になっている。

 井上さんの出身地の川西町で関連蔵書約22万冊を保管する遅筆堂文庫が3月末に発行した。昨年4月から地域おこし協力隊員として同文庫で作品を調査、研究する井上恒さん(61)が編集に当たった。

 10年以上かけて著作の情報を集めた私家版データベースを基に仕上げた井上恒さんは「これほど詳しい目録はないと思う。井上ひさしさんのみならず、文学研究の際に手元に置いてほしい一冊だ」と話す。

完成した著作目録
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