震災経験生かし憩いの場に 岩手・野田、看護師が足湯カフェ運営

地域住民が集う「たいようのいちこ」を運営する松川さん

 東日本大震災の津波で被災した岩手県野田村で、当時村職員として高齢者の健康維持に貢献した松川美穂子さん(45)が、足湯を楽しめるカフェを運営している。開業から約1年。住民の信頼が厚い松川さんの店は、地域の憩いの場として定着し始めている。

 カフェは「たいようのいちこ」。地域の方言で「太陽の居場所」を意味する。村の複合施設「ねま~る」にある。カレーなどの日替わりランチやドリンクを提供し、休日には手芸のワークショップなども開催する。

 店を始める一つのきっかけが震災の経験だった。看護師の資格を持つ松川さんは当時、村の臨時職員として高齢者の介護予防事業を担当。震災直後から、避難所で物資の整理や住民の体調確認に努めた。

 家や財産を失い、精神的に落ち込む人たちの姿を目の当たりにした。「生活もコミュニティーも再構築しなければいけない」。そのためには「看護の力」が必要だと痛感。仮設住宅で健康体操を教えたり、高齢者が心の安らぎを感じられるようにと中学生との交流イベントを開いたりした。

 しかし、支援を続けるうちに「疲れ切っている人たちに、活動への参加を呼びかけて指導するだけでいいのか」と疑問を抱くようになった。

 住民と同じ目線に立ち、より地域に貢献できる形を探ろうと退職。昨年4月に訪問整体事業を始めた。翌月にカフェをオープンさせ、避難所で好評だった足湯も設けた。

カフェでカレーを提供する松川さん

 カフェは、幅広い世代の住民が訪れる語らいの場にした。津波の記憶や子育ての悩み、地区の祭りなど、自分の思いを話してもらっている。松川さんは「お客さんが、すっきりした顔で『行ってきます』と帰るのがうれしい」と喜ぶ。

 店内のホワイトボードには「女の子の服欲しい人いませんか」「畑貸せるよ」などと書き込まれ、情報交換の場にもなった。歌手を目指す女性に、初めてのライブの会場として提供したこともある。

 「たくさんの人に面倒を見てもらって生きてきた村で、皆が輝ける場所、夢をかなえる場所を作れたら」と松川さん。生まれ育った地への感謝を胸に、住民の居場所を守り続けている。

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