(298)雨粒を涼しく濡らす雨なりけり/安里 琉太(1994年~)

 雨粒を雨が濡(ぬ)らすとは不思議な表現だ。草木の葉やコンクリートの道路に当たり跳ね返った雨粒に、空からやって来たばかりの雨が降り重なっていく様子だろうか。そうするとある程度強い雨だろう。作者の故郷、沖縄のスコールも思い浮かぶ。夏の暑さの中に感じる「涼し」さは、雨の降る大景の中、雨粒一粒に想(おも)いを馳(は)せる繊細な感覚と響き合う。下五の字余り「雨なりけり」のリズムからは、ピチャピチャピチャという涼しげな雨音も聞こえてくる。句集『式日』より。(永瀬十悟)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。

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