(304)水車ふむ悠久にして黄なる地/富澤赤黄男(1902~1962年)

 作者は1937年に応召、将校として中国各地を転戦した経歴を持つ。掲句は中国で見た長江流域の村を回想して詠まれた句の中の一句である。悠久の時をかけ滔々(とうとう)と流れる大河と、その支流で水車を踏み細やかな生活の水を汲(く)む中国の民。「水車ふむ」は庶民の日常の象徴である。軍人だったときは出せなかった平和への思いがにじむ。肥沃(ひよく)な「黄」色を生む大地と、そこで生きる人々を描くことによって、戦争の惨禍が二度と起きないようにと願う。句集『天の狼』より。
(永瀬十悟)

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秀句の泉

 「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。

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