支配者に「因果応報」を 先読み!とうほく経済ーー坪田知己

「遠望近視」(3)

 文明論的に見ると時代はどこに向かうのか。多様性の時代に企業や職場はどうあるべきか。「とうほく経済」に求められる視座を週1回、4人の識者・経済人に輪番で発信してもらう。

■ゲームになった戦争

坪田知己さん

 私は「科学の進歩とは、無責任の拡大である」と見ている。

 戦争は「ゲーム」になった。原始時代、人を殺すには、自らの手足、石やこん棒が必要だった。相手を殴れば反動があり、血しぶきを浴びる。もちろん反撃されて、自分が危うい目に遭うこともある。

 ところが、科学が進歩し、鉄砲が発明されて、引き金を引けば銃弾が発射され、命中すると敵兵が死ぬ。殺人の罪悪感は「リアクションの減少」で大きく減った。

 大砲、ミサイル、爆撃機による空爆。近年ではドローンや無人機による爆撃。戦争は、コンピューターゲーム同様のものになった。

 最近読んだ『世界はシステムで動く-いま起きていることの本質をつかむ考え方』(ドネラ・メドウズ著、英治出版)という本の中に、「ただボタンを押せば、ボタンを押した人がその被害を見ることがないほど遠くで、莫大(ばくだい)な被害をもたらせるようになったとき、戦争はさらに無責任になった」と書かれている。

 同書には、環境汚染の対策として、川に排水している町や企業には全て、自分たちの取水パイプを排水パイプの下流に設置させるという提案がある。こうすれば汚水を安易に流すことはできないはずだ。

 多くの市民が社会生活で憤りを感じているのは、支配層がずるく立ち回って、自分たちがツケを払わされているということだ。

■ポケットに爆弾を

 私は、「戦争とは、支配者が、国民に『敵国憎し』という観念を植え付け、際限なく自国民を殺す行為である」という定義をしている。太平洋戦争で殺された兵士や国民は、自国の支配者に殺された。現時点で大量に戦死しているロシア兵はプーチンに殺されているのだ。対立している国民同士は敵意もなく友好的だが、支配者が国民を自らの邪悪な欲望の「道具」にしているのが真実だ。

 そこで、新たなルールを設定したい。核爆弾を一つ配備するたびに、実際に爆発するミニチュアを支配者のポケットに入れる。核のボタンを押せば、ミニチュアも同時に爆発する。これが「真の抑止力」だ。

 現在、日本で軍備拡大の意見が盛り上がっているが、冷静になって考えてほしい。ほくそ笑むのは軍需産業だけだ。本当に必要な福祉予算は削られる。

 今の世の中で、「ミニチュア核爆弾方式」が実現するとは思わない。とはいえ、身勝手な振る舞いを続ける支配者に、どうやって「因果応報」を思い知らせることができるのか-。世界の多くの人々が、責任感を胸に憂いている。
(文明デザイナー=横浜市在住)

[坪田知己(つぼた・ともみ)さん]1949年、岡山市生まれ。東京教育大(現筑波大)卒。72年、日本経済新聞社入社。記者、デスク、電子メディア局次長などを経て2009年、日経メディアラボ所長で定年退職。日経電子版の礎を築いたことで知られる。

河北新報のメルマガ登録はこちら

企画特集

先頭に戻る