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「体育座り」はつらい 体への悪影響の指摘受け見直す学校も

 体育の授業や集会でおなじみの「体育座り」。実は、世界でも日本でしか見られない珍しい座り方で、内臓を圧迫し、座骨の痛みが出るなど体には悪影響が多いという指摘がある。集会時の座り方を見直す学校もあり、当たり前だった光景が見られなくなる日が来るかもしれない。

集会で体育館の床に「体育座り」する子どもたち

 体育座りは曲げた両膝を両手で抱えるようにして座る。「三角座り」「お山座り」とも呼ばれる。

 島根大大学院教育学研究科の久保研二准教授(39)=体育科教育学=によると、1965年に文部省(当時)が、学習指導要領の解説書として発行した「集団行動指導の手引き」で、「腰をおろして休む姿勢」として写真付きで示されてから広まった。省スペースで手遊びがしにくく「行儀よい姿勢」という印象が浸透したという。
姿勢維持に焦点
 体への悪影響として、腰痛を引き起こしていることは、研究で明らかになっている。国際医学技術専門学校(名古屋市)の理学療法士増田一太さん(42)の2014年調査で、主に関西地方の小学5年~高校3年の男女939人の12・7%に腰痛があり、座った時に痛みを訴えるケースが66・4%で、そのうち体育座り時に痛みを感じたのが52・3%だった。

 増田さんは「教育の場で話を聞くことより、姿勢を維持することに焦点が置かれ過ぎている」と問題視し、「もぞもぞ動くのは、痛みを回避しようとしているため」と解説する。

 山口県下関市豊北中(生徒113人)は昨春、集会での体育座りを改めた。着任した矢田部敏夫校長(56)が、集会時に体育座りをする生徒がつらそうにしているのを見たのがきっかけだ。

 教員やPTAと相談し、パイプ椅子を導入。集会時は生徒が自分の椅子を出し、終わればしまう。準備に5分ほどかかるが、会が1時間を超えても落ち着いて参加できるようになった。
考え方 転換必要
 床に傷が付くのを防ぐため、椅子の足に専用ゴムを装着する導入費に十数万円かかったが、矢田部校長は「当たり前とされてきた体育座りは生徒に苦痛を強いていた。考え方の転換が必要だった」と訴える。

 同様の理由で群馬県高崎市の中学生から「体育座りを廃止して」と市に意見が届いた例がある。山陰両県で動きはないが、松江市内の小学校に通う5年生の女子児童(10)は「体育座りはつらい。あぐらがいい」と望むなど、隠れたニーズはありそうだ。

 大東文化大文学部の一盛真教授(58)=教育学、鳥取市在住=は「体育座りは、際だって『日本的』な指導で子どもの人権を保障しているとはいえない」と強調する。

 新型コロナウイルス禍の「黙食」やマスクなど多くの窮屈なルールを強いられることが増えた子どもたち。座り方ぐらい自由でもいいのではないか。心身によくないことが明らかなのであれば、見直さない理由はない。
(山陰中央新報提供)

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