川にいる傷ついた白鳥、どうしたら… 野生動物ゆえに一定の「距離感」必要
「仙台市泉区の七北田川で、傷ついた白鳥が5月中旬ごろから独りぼっちで生きている」。同区の会社員伊藤淳(あつし)さん(58)から「読者とともに 特別報道室」に情報が寄せられた。現地を訪ねると、確かに手負いの白鳥が泳いでいた。心配する近隣住民もいる中、保護はできないのか。傷ついた野生動物への対応を調べた。(編集局コンテンツセンター・竹内明日香)
翼が折れて
記者が宮城県運転免許センターの裏手を流れる七北田川を訪れたのは6月2日正午ごろ。白鳥の姿は見えなかったが、伊藤さんは「さっきも見かけたので、すぐ来ると思いますよ」。口笛を吹き、手をたたいて合図を送った。
しばらくして、オペラグラスをのぞく伊藤さんが「来た」。市地下鉄南北線泉中央駅の方向から泳いでくる白鳥の姿が見えた。記者を警戒したのか近寄って来なかったが、普段はすぐ近くまでやってくるという。
白鳥は右の翼の一部が傷つき、羽根の芯がむき出しの状態だった。伊藤さんは「他の動物に襲われたら逃げられないかもしれない」と心配する。
地元住民の中にも、気にする人がいた。無職男性(70)は「少し前まで七北田公園の河原にすみ着いていた個体と同じではないか」と推測。同区の主婦(52)も公園で見かけたといい「寒冷地にいる鳥なのに、日本の夏に耐えられるのか」と懸念する。
「見守って」
傷ついた野生動物がいた場合、行政はどう対処するのだろうか。県仙台地方振興事務所に問い合わせた。
担当者によると「心配はありません」。傷つき、1羽でさみしく暮らしているように見える白鳥だが、既に獣医師などによる処置を受け、同事務所の自然保護員が定期的に観察しているのだという。
「七北田川には、けがなどで飛ぶことができず、戻れなくなってしまった渡り鳥は何羽かいる。野生動物なので飼育はできないが、対応はとっている」。夏を越えて生活する個体も一定数いるそうだ。
傷ついた渡り鳥を発見したら、どうしたらいいのか。動けないほど衰弱している場合は発見場所の市区町村を担当する都道府県の出先機関に連絡して保護を求めた方がいいが、「泳いだり食事したりしている場合は、何か理由があって飛べないだけ。生活はできているので見守ってほしい」(担当者)。かわいそうでも、餌やりは禁物だ。
巣立ちの時期
また、今はちょうどひなが巣から飛ぶ練習をする時期。地面に落ちてじっとしているひなをよく見かけるようになるが、それはまだ飛ぶのに慣れていないから。弱っているわけではなく、親鳥も上から観察しているという。
担当者は「小さくてかわいいからといって、家に連れて帰らないでほしい」と呼びかける。
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