移住支援策、ニーズとずれ 過疎化止める切り札ならず <参院選・暮らしどこへ>

公社の畑で野菜の生育状況を確かめる成田さん(左)と山口さん。「村の人と持続可能な村づくりを考えたい」と語る

 阿武隈山系に抱かれた福島県葛尾村。川の水は澄み、鳥がさえずる。時折吹き抜ける風が心地いい。

 成田朱実さん(27)と山口和希さん(25)は今春、それぞれ村に移り住んだ。葛尾むらづくり公社で移住支援員を務める。

 2人とも関東出身。大学卒業後は東京で就職した。村には縁もゆかりもないが、公社の求人に応募し、移住が実現した。

 山口さんは「能力主義でコミュニティーが希薄な東京での生活に窮屈さを感じた」と移住の理由を語る。「農村社会が残るコンパクトな村が自分にとっては居心地がいい。幸福度は断然上がった」

 村の人口は1955年の3000超をピークに減少に転じ、現在は1327人。東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示は段階的に解除はされてはいるものの、村に戻る人は少なく、実際に居住するのは467人。高齢者が46・7%を占め、過疎のスピードは加速する。

 県と復興庁は昨年7月、原発事故に伴う避難を経験した12市町村への移住促進を本格的に始動させた。避難地域に特化した支援金を創設。村への移住は他の地域に比べて手厚い支援メニューを用意する。

 だが、山口さんは「充実しているように見えるけれども、実は本当に使える人は少ない」と打ち明ける。2人とも移住の際にもらえると思っていた支援金を受け取ることができなかった。

 実際には村に空き家は多くはないのに、空き家を購入することが条件になっているなど、現実にそぐわない部分があるからだ。「使いやすく、呼び込みたい人に届く制度でなければ意味がない」。2人は口をそろえる。

 移住の相談を受けて気付くのは、ピンポイントで葛尾への移住を望む人はほとんどいないという現実だ。だから、交流人口や関係人口を増やすことが、移住者の増加につながっていくと思っている。

 「地域の良さを知ってもらうコンテンツづくりなど、移住の入り口部分に、より多くの支援が必要なのではないか」と成田さんは提言する。

 地域の活性化や復興支援にも取り組む2人は移住者の視点から村の将来を考える。「移住や定住への取り組みは大切だが、ただ人が増えればいいというわけではない。村自体が持続可能でなければならない」

 そのために自分たちは何ができるのか。葛尾らしさを大事にしながら、地域に新しい風を吹かせようと模索は続く。
(福島総局・岩崎かおり)

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