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「記憶の素描」(10)洪水ワイン-石沢麻依(芥川賞作家)

 海から遠く離れた場所に馴染(なじ)むにつれて、私の中で川が深く切り離せないものとなってきた。バルト海に面した北部の沿岸地域を除けば、ドイツの大半の人は川のある光景を身近なものと感じているようだ。確かに、海の記憶を引っ張り出そうとすると、印象派の絵画のように色彩が輪郭を越えて溢(あふ)れ、どこか遠く…

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記憶の素描

 仙台市出身の芥川賞作家石沢麻依さんのエッセーです。ドイツでの生活で目にした風景や習慣の妙、芸術と歴史に触発された思い、そして慣れ親しんだ本や仙台の記憶を、色彩豊かにつづります。

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