宮城県、津波浸水想定の1次データ公開 「沿岸15市町の了解得られた」

 宮城県は8日、最大級の津波浸水想定の1次データを県のホームページで公開した。沿岸15市町の浸水想定エリア約400平方キロを10メートル四方に区切り、各地点の最大浸水深と津波が建物にぶつかるなどした上昇分を加味した基準水位が対象。加工しやすい「シェープ形式」として提供し、利用規約を守れば随時、誰でも利用できる。

 県は5月10日に津波浸水想定を公表して以降、15市町と連携して住民向けの説明会を実施。開催回数を重ね、各市町の了解が得られたとして公開を決めた。

 村井嘉浩知事は8日の定例記者会見で「(東日本大震災を)はるかに超える津波浸水データとなるので、市町村に気を配らなければならなかった。5月の段階での公表は混乱を招く可能性があると考え、丁寧に対応した」と説明。「他県では既に出しており、(宮城県でも)公表を前提に考えていた」と強調した。

 1次データの公開を巡り、県は市町が新たなハザードマップを策定する前に第三者がマップを完成させる可能性などを指摘し、早期の公開に難色を示していた。村井知事は「結果的には3カ月の間、津波被害はなく、このタイミングで問題なかったのではないかと思う」と述べた。

 津波浸水想定によると、太平洋側の巨大地震で最大級の津波が発生した場合、県全体で震災の1・2倍となる391平方キロが浸水。被災地の集団移転先やかさ上げ地の一部も含まれる。県内の最大津波は気仙沼市本吉町の約22メートル。第1波の到達時間は最も早い気仙沼、石巻両市で21分と予測した。

オープンデータ化、県はスピード感を

 最大級の津波浸水想定の1次データ提供に難色を示していた宮城県が一転、公開にかじを切った。東北6県の津波浸水想定マップを作成するため、河北新報社が提供を求めてから2カ月以上要した。

 ホームページで1次データを公開している秋田県の先行事例を踏まえ、河北新報社が宮城県に提供を促したのは5月26日。しかし県は「前例がない」と回答を保留したため、情報開示請求をすることにした。

 しかし、県は6月9日、関係市町のハザードマップ作成に支障を来すことなどを理由に非開示を決定した。公開に明確に反対する市町がないことを取材で確認し、8月3日に宮城を除いて東北5県のマップを公開した。

 8日の定例記者会見で村井嘉浩知事は公開の前提として「市町の理解」を繰り返し強調したが、発言は法律の趣旨からも到底受け入れられない。

 津波防災地域づくり法は浸水想定の設定と公表を都道府県に義務付けた。1次データの公開に後ろ向きな市町があれば、むしろ「非公開とする理由がない」と指導する役割が県には求められる。

 河北新報社に限らず、全国の防災アプリ事業者などが公開を待っていた。1次データは住民の避難計画を分析する学術研究などにも広く用いられる。公共データを民間が加工・編集しやすい形式で提供する「オープンデータ化」は世界的潮流でもある。

 あの東日本大震災で図らずも学んだように、官民が力を合わせなければ危機は克服できない。県はスピード感を持ち、県政情報のオープンデータ化に取り組むべきだ。(コンテンツセンター・佐藤理史)

東北のマップ、宮城分を追加 河北新報社

 宮城県の津波浸水想定1次データ公開を受け、河北新報社は8日、東北各県の浸水想定をパソコンやスマートフォンに表示するマップに宮城分を追加した。河北新報オンラインニュースで閲覧できる。

 マップは想定される浸水深を8段階に色分けし、衛星写真に重ねている。マウス操作やスマホの画面操作で縮尺や表示範囲を変えることが可能。宮城以外の5県分は3日に一斉公開していた。

「東北の津波浸水想定マップ」のスマホ画面
東北の津波浸水想定マップ
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