東北の強みは「美」にあり 先読み!とうほく経済ーー桜井鉄矢

鑑定ビジネス裏表(5)

 文明論的に見ると時代はどこに向かうのか。多様性の時代に企業や職場はどうあるべきか。「とうほく経済」に求められる視座を週1回、4人の識者・経済人に輪番で発信してもらう。

漫画の経済的インパクトに注目

 これは本物か偽物か-。古物商にとって依頼品の真贋(しんがん)を見分ける目はとても重要です。一方で自分が何に美しさを感じるかは別問題。古物商としてそれなりの数の芸術品に触れてきた私は、東北の強みは「美」にあると考えてきました。

 中でも注目しているのが漫画です。仙台関連の作品が次々とヒットし、国内外で話題になっています。

 仙台市出身の漫画家荒木飛呂彦さんの「ジョジョの奇妙な冒険」。宮城県を舞台としたバレーボール漫画「ハイキュー!!」。仙台市の高校生が世界的なジャズのサックス奏者を目指す「BLUE GIANT」。登場キャラクターの好物としてお茶の井ケ田の看板商品「喜久福」が登場する「呪術廻戦」。仙台・宮城を舞台に繰り広げられる壮絶なバイオハザード作品「インフェクション」…。

 ファンが作品ゆかりの地を訪れ、ゆかりの商品が売れていることを考えれば、漫画の経済的インパクトは侮れません。

いつか「東北のバンクシー」を

 しかしながら、芸術の世界の成功者はほんの一握り。日本では芸大を出ても芸術家として生計を立てていけるのはわずかと聞きます。それに対し、以前訪れたパリで衝撃を受けました。

 当欄でも以前お伝えした通り、私は古い着物から作ったアロハシャツを「サムライアロハ」と名付け、国内外で販売しています。数年前、パリコレクション期間中のファッションウィークに招かれました。

 ショーの合間、パリ市街を散策して驚かされたのが、芸術家のアトリエの多さでした。パリの一等地に創作の場を構え、作品の販売もしているのです。東京はもちろん、日本ではまず見られない光景でした。

 芸術を取り巻くこのような環境の違いは、なぜ生まれるのか。古物商を長年している私の私見ですが、日本の芸術作品は作者が亡くなった後に評価されることが多いのと関係していると思います。裏を返せば存命中は売れないまま。アトリエを構えるのは至難です。

 一方で海外では、大学のカリキュラムで自分の後援者(パトロン)を得ることについてもちゃんと指導していると聞きました。この違いも大きいでしょう。

 私は日本の芸術を取り巻く現状を少しでも変えたいと、東北の芸大と連携し2020年冬から、学生の作品の販売サポートを始めました。当社は質屋ですので芸術品の保管や取り扱いには一日の長があります。

 学生が自分の作品を売ることで芸術家として生計を立てられる仕組みを作る。いつか「東北のバンクシー」が生まれ、そして仙台・宮城を「美術の街」として世界中にアピールするのが、「なんちゃって美術商」でもある私の夢です。
(古物商「仙台買取館」代表取締役=仙台市在住)

さくらい・てつやさん 1981年、宮城県岩沼市生まれ。2004年、明治大経営学部卒。古物商大手「大黒屋」に入社し、東京・新宿西口店店長、フランチャイズ事業課長などを歴任した。11年、東日本大震災で実家が被災したため、帰郷して「仙台買取館」を設立。現在は仙台市内でフランチャイズ店として「大黒屋」3店を営む。18年には着物をリメーク販売する「サムライアロハ」も設立し、代表を務める。妻、長男(3)の3人暮らし。

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