クマの人身被害、過去10年で最多 東北 個体数増え生息域拡大

 東北で本年度、ツキノワグマが人を襲うケースが相次いでいる。8月までの人身被害40件は過去10年で最も多かった。個体数の増加に伴う生息域拡大が一因とみられ、各県担当者は「クマはこれから冬眠に備えて活動が活発になる。山に入る際は万全の注意をして」と呼びかける。

仙台市青葉区のJR陸前落合駅前で捕獲されたクマ=7日午前0時15分ごろ

恐怖で真っ青

 「クマに襲われた」。7月下旬の早朝、仙台市青葉区熊ケ根の無職男性(67)の自宅に50代女性が駆け込んできた。雑木林から出てきたクマに突進されたといい、引っかかれたような傷痕があった。

 現場は仙台市西部の山間部。男性は「近所でクマの目撃例はあったが、人が襲われたのは初めて。女性は恐怖で顔が真っ青だった」と語る。

 環境省などによると、本年度の東北の人身被害40件は既に昨年度1年間の32件を超えた。4~8月ベースでは過去10年で最多だった2017年の38件を上回る。県別では岩手(20件)が最も多く、福島(7件)と秋田(6件)が続く。

 5月下旬には北秋田市で農作業中の男性(78)がクマに襲われて亡くなった。会津若松市で7月下旬、頭から血を流して倒れ、その後死亡が確認された無職女性(89)も傷の形状からクマに襲われたとみられる。

駆除追い付かず

 クマの個体数増加は顕著だ。宮城県の調査によると、県内のツキノワグマの推定生息数は08年度に633頭だったが、21年度には3629頭と6倍近くになった。他県も同じ傾向にあるとみられる。

 人口減少に伴う過疎化も影響している。増えたクマの一部は、本来の生息地の山林から果実などの餌が豊富な耕作放棄地に移動し、人と遭遇しやすくなった。狩猟者も減っており、増加に駆除が追い付いていないとの指摘もある。

 全国的には19年度以降に人身被害が増え、環境省は20年度から関係省庁の担当者を交えた連絡会議を毎年開催。本年度も今月1日に開き、被害防止に向けた取り組みの推進を確認した。

近くにいる前提で

 近年は都市部や住宅地での出没も相次ぐ。盛岡市では8月中旬以降、市中心部で目撃情報が多く寄せられ、JR盛岡駅近くの旭橋付近でも体長約1メートルのクマが見つかった。今月7日未明には仙台市青葉区のJR陸前落合駅前の街路樹で、クマが捕獲された。

 森林総合研究所東北支所(盛岡市)の大西尚樹博士は「分布域拡大と個体数増加は防ぎようがない。山際や中山間地に住む人は、クマが近くにいるという前提で被害に遭わない対策を講じる必要がある」と話す。

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