「記憶の素描」(12)香りの色彩画-石沢麻依(芥川賞作家)
空気が透明感を増してくると、街や森の中に柔らかな薄い金色の気配がないかと思わず探してしまう。夏に疲れ少し褪(あ)せた緑の葉を被(かぶ)る樹木のある通りを抜け、イェーナの旧市街に入ってゆくと、リキュールを扱う店舗と出会う。大きな一枚ガラス越しに、金や琥珀(こはく)、蜂蜜色、飴色(あめいろ)などを閉じ…
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