(391)月光やきちんとものを畳み寝る/吉沢紀子(1943~2020年)
月の明るい夜は、普段身近にあって気にしないものが意外なほど特別な存在に感じる。家の中の本や鏡は静かに呼吸しているかのようだ。雑多な色は消え、青い光だけの世界となる。作者の畳んでいるものは何だろう。明朝に着る服、仕舞(しま)えぬままだった洗濯物、それとも今日一日の来し方かも知れない。「きちんと」は、…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。