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<311次世代塾>生活再建の苦労知る/第6期第9、10回詳報

荒浜小の被害について話す矢崎さん
東日本大震災の津波について説明する長沼さん

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第6期第9、10回講座は8日、仙台市若林区の市震災遺構荒浜小と名取市閖上を視察した。大学生17人が、荒浜地区で震災伝承と追悼プロジェクトなどに取り組む団体「ホープ・フォー・プロジェクト」のメンバーと、閖上に自宅を再建した被災者の話を聞き、津波被害のほか、伝承活動や生活再建の課題について学んだ。

 海から約700メートルにある荒浜小は津波で4階建て校舎の2階まで浸水した。受講生は折れ曲がったベランダの鉄柵や壊れたコンクリートの壁など、津波の爪痕が残る校舎を見学した。

 プロジェクト主宰の市嘱託職員高山智行さん(39)、メンバーの東北大4年矢崎碧さん(22)、会社員浜岡恭太さん(30)が案内。児童71人を含む住民ら320人が避難した学校の様子、人が住めない災害危険区域になった地域の経過と住民の思いを語った。

 団体は住民の聞き取りなどを基に伝承活動を続ける。山梨県出身の矢崎さんは「記憶を伝え次の災害に備えることが大事。被災地出身ではない自分も関わって話している」と述べ、「皆さんも伝える側になり、学んだことを勇気を持って周りの人につないでほしい」と呼びかけた。

 名取市閖上の日和山では、閖上中央町内会長の長沼俊幸さん(60)が自分の津波体験、地域の被害と震災前後の変化を説明した。

 同地区は津波で790人が犠牲になった。長沼さんは「過去の津波を記した碑はあったのに『ここには津波が来ない』と思い込み、逃げない住民が大勢いた。教訓を伝えてこなかった」と話し、過去の災害を知ることの重要性を強調した。

 一方で「大雨など災害は日本中で起きる。異変を感じたらまず逃げて自分の命を守ってほしい」と、地震、津波以外の災害にも目を向けるよう促した。

 会場を名取トレイルセンターに移し、長沼さんは「二重ローンと生活再建」と題して震災後の歩みを振り返った。仮設住宅に6年半住み、2017年7月に閖上に自宅を再建。津波で流失した築9年の家と2軒のローンを払い続け、旧宅分の返済をやっと今月終えたという。

 「震災後に債務整理の制度ができたが使えなかった」と報告。仮設住宅の使用や住宅再建で災害救助法が壁になったことに触れ、「住まいは生活再建で一番重要。被災者の救済につながるように制度や法律を見直してほしい」と訴えた。

<受講生の声>

■人ごとではない
 荒浜小の視察で以前の地域の生活や震災以降の経過を知り、同じ時間を生きている自分にも起こりうる出来事で人ごとではないと感じました。記憶と教訓を風化させないことが大切。同世代のガイドの話を聞き、自分も伝える役割を担えると励みになりました。(仙台市青葉区・東北大2年・柴田美夢菜(みゆな)さん・20歳)

■柔軟な対応必要
 長沼さんから債務整理の制度を利用できた被災者が少なかったという話を聞き、被災者を救うために、もっと柔軟に対応するべきだと思いました。避難所や仮設住宅の生活は、自分だったら周囲の音や目が気になって、厳しいかもしれません。(仙台市青葉区・東北福祉大3年・細梅倫央(のりお)さん・20歳)

<メモ>

 311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

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