<311次世代塾>災害リスク 確認重要/第6期第3、4回詳報
東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第6期は2022年6月11日、第3、4回講座を開いた。宮城県南三陸町の震災復興祈念公園を大学生と若手社会人50人が訪れた。旧防災対策庁舎などを見学し、津波の脅威や備えの教訓を学んだ。
講師を務めたのは、震災発生当時、副町長だった南三陸研修センター顧問の遠藤健治さん(74)。JR気仙沼線の線路跡やかさ上げ地にある商店街、高台の集団移転団地を示しながら、津波被害の跡と復興の状況を説明した。
公園内の築山の中腹を巡る「高さのみち」では「津波高と同じ16.5メートル。町を襲った津波の高さを想像してほしい」と語った。
町は津波で約830人が犠牲になった。震災前、町は将来の宮城県沖地震の津波に備え、潮位変化の検知システムや避難路の誘導サインなどを導入。町民も地域ごとに防災訓練を行っていた。「危機意識を持って取り組んだつもりだったが、結果として命を守れなかった」と悔いた。
犠牲者は浸水想定区域外に多かったという。「ハザードマップは一定の条件でつくられ、条件が変われば被害区域も変わる。配布するだけでなく、訓練に出向いて想定外が起きた場合の対応などを話し合う必要がある」と強調した。
町は住宅を高台に移し、店や工場を津波浸水区域のかさ上げ地に再建する職住分離の方針で復興のまちづくりを進めた。震災後11年が経過し「住まいと就労の場の行き来といった生活利便性の確保、移転団地でのコミュニティーの再生が課題だ」と指摘した。
地震、水害が頻発していることにも触れ、「住んでいる地域の災害リスクを確認し、命を守る行動を日々の生活の中で考えることが大切。災害を正しく恐れ、自分の命は自分で守るという意識を持って学んでほしい」と呼びかけた。
旧防災対策庁舎では、津波で町職員ら43人が犠牲になった。遠藤さんも庁舎屋上にいたが、九死に一生を得た。この日は震災11年3カ月の月命日。受講生は献花台に花を手向け、犠牲者に黙とうをささげた。
<受講生の声>
■防災意識し行動
旧防災対策庁舎の下に立ち、折れ曲がった手すりなどを自分の目で見て津波の高さと威力を実感しました。自然災害を正しく恐れることが大切という講師の言葉を忘れず、どの地域にいてもハザードマップや気象情報を確かめるなど防災を意識して行動したい。(仙台市青葉区・東北福祉大3年・佐藤梓(あずさ)さん・21歳)
■「想定外」再認識
津波に襲われ、奇跡的に助かった一方で同僚を亡くした遠藤さんの恐怖や心の痛みを考えずにはいられませんでした。南三陸町ではハザードマップの浸水想定区域外の住民も犠牲になりました。津波はマップの想定を超える場合があると、認識を新たにしました。(宮城県大郷町・東北工大3年・赤間颯音(はやと)さん・21歳)
<メモ>
311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。
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