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<311次世代塾>被災後に困難抱える子の支援を/第6期第13、14回詳報

子どもの学習支援で見えてきた課題を振り返る大橋さん
会場を歩きながら折り紙を使ったプログラムについて説明する菅原さん

学習支援の場や思いを表す場、活動事例学ぶ

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に、河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第6期は2022年12月10日、「被災者支援」をテーマに、第13、14回講座を仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパスで開き、大学生ら80人が参加した。

 子どもの学習支援を行う仙台市のNPO法人アスイク代表理事の大橋雄介さん(42)、震災遺児の心のケアを続ける東松島子どもグリーフサポート代表理事の菅原節郎さん(72)が講師を務めた。

 大橋さんは震災発生約1カ月後の2011年4月にボランティアらと市内の避難所を訪ね、子どもの勉強をサポートする活動を始めた。その後も仮設住宅団地の集会所や、アパートなどみなし仮設住宅に住む子のために拠点を設けて活動を続けた。

 活動の中で、不登校で日中も仮設住宅にいる子、親の借金で転居が続き十分に学校に通えなかった子など、困難を抱える子どもを目の当たりにしたという。

 大橋さんは「震災前は見えにくかった問題を、震災は浮き彫りにした」と指摘。「子どもの支援は家庭を含めた関わりが必要で、学習支援は家庭と関係をつくる入り口になる。コロナ禍も共通するが、生活基盤の弱い人が困らないネットワークを築くことが重要だ」と訴えた。

 菅原さんは東松島市野蒜の自宅を津波で流失、妻郁子さん=当時(53)=、長男諒さん=同(27)=を亡くした。市議だった菅原さんは揺れが収まると、2人に近所の高齢者の避難を頼み、地域に避難を呼びかけるため家を後にした。移動中に車ごと波に流されたが、民家に逃げて命拾いした。

 2人の行方が分からないまま避難所運営に追われ、約10日後に2人の遺体を市内の安置所で確認。自責の念と罪悪感からうつ病を患い、入退院を繰り返した。

 津波で親を失った子が市内に三十数人いると知り、専門家の協力を得て子どものグリーフケアを11年5月に始めた。子どもが思いを自由に表せる集まりを定期的に開き、対象を県内に広げて活動を続けている。

 菅原さんは「子どもは成長とともに自分と向き合うすべを身につける。回復のスピードはそれぞれなので、息長く関わりたい」と述べた一方、「活動で自分も救われた」と明かした。

 震災から11年9カ月となる遺族の心情を「亡くなった家族を思わない日はない。若い皆さんが被災地に関心を寄せ、訪ねてくれることが力になる」と訴えた。

 受講生は大切な人やものを折り紙に書いた後でちぎって並べ直し、喪失による悲嘆と回復支援の心の動きを疑似体験するプログラムにも取り組んだ。

<受講生の声>    

■自ら話すのを待つことが大事
 子どもが自分の感情を言葉にするのは難しいと思います。大橋さんの話を聞いて、無理に聞こうとせず、子どもが自ら話すのを待つことが大事だと分かりました。将来、看護師を目指しています。患者の気持ちに耳を傾けることができる看護師になりたいです。(仙台市若林区・宮城大2年・古川美友さん・19歳)

■生同士交流で教訓伝える
 菅原さんは津波で家族を亡くすつらい経験をしたのに、避難所運営や遺児の支援を続けたのはすごいと感じました。気負わず被災地に来てほしいとの言葉が胸に残りました。関心を持ち続け、学生同士の交流で教訓を伝えるなど備えと伝承に取り組みたい。(仙台市宮城野区・東北大1年・後藤太朗さん・19歳)

<メモ>

 311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

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