閉じる

高知市にUFO? その正体は… 「異国の伝統」夜空もにぎわす

 すっかり秋めいたこの頃。夜明けの空を見上げれば…。「UFOやないろうか?」。8日、空に白い謎の物体が飛んでいるのを見た、との情報が高知新聞「なるほど! こうち取材班」(なるこ取材班)に寄せられた。交流サイト(SNS)にも4日ごろから高知市西部などで雲間を漂う白い光をとらえた動画の投稿が相次いでいた。光の行方を追いかけた取材班が出会ったのは―。

夕方、高知競馬場の屋根越しにうっすらと漂う白い光(写真はいずれも高知市長浜宮田=森本敦士撮影)

 電話をくれた高知県南国市岡豊町吉田に住む門田美津夫さん(74)に話を聞いた。
 夜明け前の8日午前4時50分ごろ、愛犬と散歩に行こうと玄関を出ると、厚い雲が覆う南の空を白いものがよぎった。
 「白い鳥が何羽か漂いゆうような、と思うたら東へぴゅっと飛んで西へもんて、またじわっと上昇した」。早朝の神社参りが日課の近所のお年寄りも「昨日も見た。あれはUFOや」と話したという。
 SNSでは4日以降、高知市などで早朝や深夜に撮影されたという画像や動画が相次いで投稿されていた。中には二つの白いものがじゃれ合うように飛んでいる動画も。「空が白んでいくとともに消え去りました」との声もあった。
 取材班が周囲に問い合わせたり、ネット情報を集めたりすると、答えらしき証言にたどり着いた。
 「競馬場でやりゆうサーカスのサーチライトでは」

雲のスクリーン

 さっそく、高知市長浜宮田の高知競馬場駐車場を訪ねた。「まさかUFO騒ぎになるなんて」。さくらサーカス代表の小深田尚恵さん(38)が驚いた様子で話してくれた。
 サーカスは9月17日からこの場所で高知公演をスタート。10月初め、テント入り口にサーチライト2台を設置した。興行中にクリスマスを迎えることから、テント周辺をにぎやかに飾るイルミネーションを増やす目的だった。
 太平洋側に向けて、南から東へ、反時計回りに繰り返し楕円(だえん)を描くように設定しており、日が落ちる午後6時過ぎにスイッチを入れ、早朝まで点灯させているという。
 念のため、高知市の高知みらい科学館でネットの動画を確認してもらった。
 「これはライトの光ですねえ」。空に詳しい前田雄亮学芸員によると、雲がスクリーンの役割を果たし、地上からの光を映し出して起きた現象だという。
 門田さんが白いものを見た8日朝は、雨上がりの曇天。秋空によく見られる高さ6千~8千メートルの高層雲よりずっと低い2千~3千メートルの高さに雲が浮かんでいたとみられる。
 サーカスから南国市の門田さん宅までは直線距離で約13キロ。前田さんは「この日は雨上がりの早朝で、千メートル程度にも霧のような雲が出ていて、離れた場所からでもはっきりと見たのでは」と話した。

サーカスのテントから伸びるサーチライトの光跡。雲がスクリーンの役割を果たしていた

「明日もいますよ」

 では、なぜ多くの人が寝静まった時間帯にライトを点灯させているのか。
 さくらサーカスは小深田さんの夫で団長のマルチネス・アランさん(45)が率いる。「町中で毎日、3チームには会える」というサーカスが盛んなコロンビア出身で、120年以上続くサーカス一家の4代目だ。
 一日のショーが終わってもテントの明かりやイルミネーションは消さないのが、コロンビアのサーカスの伝統だという。「あなたの町に、明日もサーカスはいますよ」。わくわくする世界がそばにあることを伝えるためなのだそうだ。
 3連休最後の夕方、テント上空にはオレンジ色に染まった雲が広がった。南国市の門田さんを訪ねた。介良富士の上空にうっすら漂う光。門田さんが見たのはあの光でしょうか?
 「ああ、間違いないです! 競馬場のサーカスの光がここまで届くとは、発見ですねえ。えい思い出になりましたわ」
 さくらサーカスの高知公演は来年1月15日まで。小深田さんは「UFOの正体をぜひ、確認しにきてください」。
 もしも1月16日以降に不思議な光が見えた時は、またご一報を。
(高知新聞・蒲原明佳)

関連リンク

関連タグ

最新写真特集