再診なしで繰り返し使える「リフィル処方箋」 医師会が慎重姿勢、普及はこれから
「かかりつけ医に『リフィル処方箋』をお願いしたところ、『うちではやらない』と言われた。せっかく新しい制度ができたのに…」。宮城県名取市の無職男性(68)から「読者とともに 特別報道室」に相談が寄せられた。4月に導入されたリフィル処方箋は一定期間内なら再診なしで同じ処方箋を繰り返し使えるが、まだ緒に就いたばかり。制度の仕組みや特徴、留意点などを取材した。(編集局コンテンツセンター・小沢一成)
個別に判断
男性は高血圧治療で近所のクリニックに2カ月に1度通院している。「受診のたびに1、2時間待たされ、診察は2、3分の雑談だけ。聴診器も当てられず、薬はずっと変わっていない」とため息をつく。
リフィル処方箋をインターネットで知った男性は医師に利用を申し出たが「うちではやらない」として認められなかったという。男性は「薬局で薬をもらえばいいだけなのに、受診の時間や診察代がもったいない」とこぼす。
英語の「リフィル」は「補充」「詰め替え」を意味し、リフィル処方箋は本年度の診療報酬改定で導入が決まった。症状が安定している患者が対象で、医師が可能と判断した場合、同じ処方箋を最大3回まで使うことができる。投薬期間は医師が個別に判断し、投薬量に限度が定められている医薬品(新薬、向精神薬、麻薬)や湿布薬は対象外。
リフィル処方箋により薬の処方のためだけに通院する患者の負担軽減、医療費抑制も期待される。一方で患者の症状悪化を見逃す恐れや医薬品転売を懸念する声は根強い。医療機関にとっては収入減にもつながる。
今年2月、日本医師会の中川俊男会長(当時)は定例記者会見で「長期処方にはリスクがある。定期的に患者を診察し、医学的管理を行うことが安心安全で質の高い医療だ」と強調。その上で、リフィル処方箋について「患者の健康に関わるため、慎重の上にも慎重に、そして丁寧に始めることが望ましい」と述べた。
薬局と連携
日本保険薬局協会(東京)が5、6月に実施した会員アンケートによると、回答した約1万1900薬局のうち、リフィル処方箋を受け付けた実績があるのは17・6%だった。全処方箋のうち、リフィルが占める割合は0・053%にとどまった。
宮城県薬剤師会の山田卓郎会長は「リフィル処方箋が出されるのは患者の症状が落ち着いていて、医師が大丈夫と判断した場合だ。必ずしも患者が希望すれば出してもらえるわけではない」と説明する。
リフィル処方箋の導入で薬剤師は調剤する際、患者の体調や服薬状況などを確認し、必要に応じて調剤せず受診を勧めることになった。山田会長は「処方医も患者の体調変化が分からないと、リフィル処方箋を出しづらいだろう。薬局はリフィルにきちんと対応できる態勢を整え、処方医ときめ細かく連携し、少しずつ信頼関係を構築していきたい」と話す。
リフィル処方箋を希望する患者に対しては「リフィルによる調剤は同じ薬局でなくてもいいが、薬の管理や体調チェックを考えると同じ薬局の方がいい。処方箋を患者が持ち帰ることになるので、紛失しないよう気を付けてほしい」と呼びかける。
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