学校給食に「アルミパックご飯」 静岡モデルに全国から視察 かつて青森・八戸でも
静岡県浜松市や湖西市、焼津市などの給食で採用されるアルミパックご飯の謎を追った9月8日付朝刊の記事には読者からさまざまな反響があった。さらに取材を進めると、全国で米飯給食が導入された1976年当時、画期的な納入方法として、全国の学校に「静岡県方式」が紹介されていたことが分かった。
アルミパックご飯は県学校給食パン協同組合が開発。76年に県内の給食で導入された。当時、組合がまとめた資料によると、米飯をどのように供給するかは全国共通の課題で、アルミ製造会社を通じ、各都道府県に紹介した。
「全国に広がり大量生産されれば(容器の)単価も下がり、児童生徒の経済的な負担も軽減される」。資料には担当者の思惑がのぞく。77~79年には北海道パン協同組合や福岡県教委など16団体が視察に訪れ、「採用する県が増えている」とある。
このうち青森県八戸市では2016年度まで、静岡県と同じ方式でご飯を提供。同市教委が87年にまとめた「給食記念誌」によると、米飯給食が始まった76年にはアルミニウムの表面を処理し、高い耐久性を持つ「アルマイト食器」を採用したという。
ただ、この食器は再利用するため、回収や洗浄に手間がかかり、2年後には使い捨て可能なアルミパックに移行。記念誌には「どこもやっていないので八戸方式と言われた」との記述が残るが、アルミパックご飯は八戸市より先に静岡県が導入している。
1回で処分可能
静岡県学校給食パン協同組合でアルミパックご飯の開発に関わった製パン会社「富士物産」の代表、故足立弘さんの長男哲也さん(68)は「アルマイトは洗浄するのに人手がいるので、研究段階で放棄したようだ」と明かす。1回で処分可能なアルミパックを研究し、採用に至ったという。
組合に残る資料にあった全国の学校給食会や教育委員会に取材したところ、現在、アルミパックご飯を使用しているところはなかった。しかし、兵庫県明石市や広島県福山市では過去に採用していたという。
米飯給食の導入時、哲也さんは22歳。開発には関わらなかったが、パンからご飯への切り替えによる売り上げの落ち込みを案じ、開発に奮闘する父の姿をなんとなく覚えているという。
米飯給食導入後もパン業者がご飯の納入を担う決め手となったアルミパックご飯。哲也さんは「当時の関係者一丸になってコストをかけずにパン業者が調理可能な炊飯方法を考え出したんだと思います」と話した。
(中日新聞東海本社・小林颯平)
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