上半身裸で体操、厳しい応援団指導… 高校運動会の伝統はあり? 福岡
「上半身裸で体操させられる」「応援団から厳しい指導を受ける」。福岡県内の高校の運動会を巡り、現役高校生から「伝統の種目や演目が時代遅れに感じる。嫌な生徒も多いので、やめてほしい」との投稿が、西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。学校を取材すると、生徒間でも意見が割れていた。見直しか、それとも伝統重視か-。
「恥ずかしい。嫌な思い」
福岡県北部にある公立高校の運動会では、男子全員が上半身裸になって体操する種目がある。
投稿者によると、学校独自の集団体操のようなもので、「いち、に、さん、しっ」と声を上げながら2~3分、全員が同じ動きを一斉にする。
「女子も見ていて恥ずかしい。友達の中には、ガリガリの細い体形や色白の体を気にしている人もいて、嫌な思いをしている」。投稿者はこう代弁する。
学校側の見解を尋ねると、校長は「上半身裸になるかどうかは、実行委員の生徒と先生が最終的に毎年決めている。強制はしていない」と説明。過去、着衣したまま体操をした年もあったとしている。
実行委員の3年生は「力強さを表現したく、先輩たちを参考に上半身裸に決まった。良い伝統は引き継ぎ、大事にしたいと思った」と話した。来年からは生徒総会で議論することも検討しているという。
力尽きて倒れた生徒も
福岡市内の公立高校の運動会では、厳しい応援指導が伝統になっている。
投稿者によると、運動会の最後には、全校生徒が体を後ろに反らしながら大声で応援歌を歌ったり、手拍子を打ったりする演目がある。
この演目のため、入学するとすぐ各クラスから2人が応援団のような組織に加入させられる。8月下旬から毎日、この組織が指導役となり、炎天下の運動場で、クラス全員での応援歌の練習が行われる。
メンバーの生徒は先生からも一目置かれる存在だが、生徒に対しては「もっと声を出せるやろうが」「休憩中だからといって、しゃべんな」など厳しい口調で指導。9月の運動会本番では、応援歌の演目などで、力尽きて倒れた人もいたという。
同校でも男子生徒が上半身裸で体操する種目がある。福岡県が受け付ける「県民の声」で4月、同校の関係者とみられる人から「体操は長年の伝統で、大切なものというのは理解できるが、本当に嫌な人もいる」との投稿が寄せられた。
相談しやすい環境を
県教育委員会はこれを重く見て、学校側に生徒の意見を聞くよう促した。だが、校内調査で不満の声は出ず、県教委は「直接言いにくい生徒もいるはずだ。相談しやすい環境をつくるように」と指導。学校側は取材に「生徒の意思を尊重し、先生がバックアップしている。さまざまな意見があることは承知している」と回答した。
九州大の増田健太郎教授(臨床心理学)は「運動会などの行事は不登校にも、学校生活の円滑化にもつながるもろ刃の剣のようなものだ。伝統には悪い面も良い面もある。今は変革期にあり、子どもたちが納得しているのか、丁寧に学校内で話し合うことが不可欠だ」と話している。(西日本新聞・竹中謙輔)
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