修学旅行の宿泊費、食費、交通費… 引率教員は自腹? 支給される? 中部9県
小学生の娘の修学旅行が近づいてきましたが、先生方の旅費は自己負担とも聞きました。大変な仕事なのに、本当でしょうか。もしそうだとすればかわいそうではないかと思うのですが…。-岐阜市の主婦(41)
「まさか」が第一印象でした。修学「旅行」とはいえ、先生たちは児童生徒を監督する「業務」のために同行しているからです。「仕事なのに身銭を切らされることがあるの?」。中部9県に取材すると、さまざまな違いが浮かび上がりました。(中日新聞名古屋本社・高田みのり)
公立、線引きさまざま
ツイッターに「引率 旅費」と打ち込んで検索してみると、意外にもキーワードが一致するツイートは多数。その中で、こんな投稿が目にとまった。
「引率教員の修学旅行や遠足の旅費入園費など、いまだに一部または全部自腹の自治体があるらしい」
投稿は今月上旬。投稿が共有されたり、「いいね」されたりした回数は、同様のツイートの中で頭一つ抜きんでている。教員と思われる人たちからも、「これだけ(お金が)かかったからと言われて一旦は払うが、後で全額返ってくる」「食費以外は出してもらえる」など、さまざまな反応が寄せられていた。
食費程度を自己負担するのが一般的なのだろうか? そう思って読み進めていくと、公立と私立の違いをうかがわせる投稿もちらほら。
「全部学校負担の私学。公立から来た先生は『交通費しか出なかった』と言ってた」「公立中です。修学旅行代は一旦自腹。後で出張代が出るが、1万円くらいマイナス」
高知県の私学教員、野崎浩平さん(42)は昨年、ツイッターのアンケート機能を使い、「修学旅行の引率で、教員が自分の旅費を負担することってあるの?」と投稿した。85人が投票し、「自分の旅費は自己負担」は38.8%に上った。
「『うそでしょ』という感じ。自分は今まで1円も払ったことがない」と野崎さん。生徒の監督に追われて食事を楽しむ余裕すらないのが実情だと語り、「業務で行くのに旅費が自己負担なのはおかしいのでは」と指摘する。
文科省のルールは…
文部科学省財務課によると、学校運営にかかる経費は「設置者負担主義」。私学なら学校法人がそれぞれ定めるルールで、公立なら市町村が条例などに基づき負担する。ただ、市町村の財政には差があるため「政令市以外の公立学校にかかる経費は都道府県が負担する決まり(市町村立学校職員給与負担法)」と同課の担当者。安定した教育を提供するためという。
中部地方の公立学校教員はどうなのだろうか? 中部9県によると、修学旅行や出張などの旅費は、県条例(旅費規定など)を基に支給される(富山は修学旅行のみ県教委が定めるルールに基づいて支給)。そこで9県に(1)宿泊費(2)交通費(3)食費(4)施設入場料−の4項目を聞いた。
各県の違いが色濃く出たのが食費だ。宿泊プランに食事が含まれない場合に支給するが、細かな支給条件が異なった。「実費支給」の愛知や三重など4県は、いずれも1食当たりの金額や宿泊費との合計額に上限を設定。岐阜は「宿泊費の10〜30%を食費として支給する」、富山と福井は「常識の範囲内で実費支給」、長野と滋賀は実際の食費に関係なく「定額支給」としている。
修学旅行では美術館や遊園地に行くことも多いが、各施設にかかる費用を支給するのは長野と石川だけ。ただし、いずれも遊園地の場合、入場券に観覧車などの遊具利用料が含まれれば支給対象外となる。富山を除く残り6県は「県費では負担しないが、市町村から出す可能性がある」と説明した。
野崎さんは「引率旅行は、少なからず教員の善意で成り立つ部分がある」と指摘。周囲には「修学旅行の下見に自腹を切った」と話す教員仲間もいる。「旅費負担を巡る各県の対応は、先生ですら知らないことがほとんど。まずは現状を知ってもらいたい」と話した。
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