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眉毛そったら中体連に出られない 「懲罰的」な校則の理由は? 福岡

 「眉毛をそったとして、スポーツ大会の出場が許されない生徒がいた」。西日本新聞「あなたの特命取材班」に、福岡県の公立中サッカー部の保護者から情報が届いた。この中学では校則で眉ぞりが禁止され、わずかでも整えると部活動の試合に出られないのだという。下着の色指定などが「ブラック」と批判されることもある校則。この罰則は、どう思いますか?

眉ぞりを禁止した福岡県の公立中の校則。違反すると、部活動の大会に出場することができない

校長「入部届に明記」

 保護者によると、7月にあった日本中学校体育連盟(中体連)の地区大会で、サッカー部2年の男子生徒が「眉毛をそった」との理由で出場が許可されなかった。「絶対におかしい」と憤る。

 中学の校長は本紙の取材に事実関係を認め、経緯をこう説明した。

 6月に身だしなみのチェックが学校であり、この生徒の眉の下部がそられていることが分かった。保護者が当日朝、眉毛を整えていた。生徒は「太いことがコンプレックスだった」と話した-。

 この中学では部活動の入部届に、眉をそると大会に出場できない場合があると明記している。内規では、生えそろうまでの期間を考慮して「少なくとも1カ月は大会に参加できない」と定める。男子生徒とは別に今年、バレー部1年の女子生徒も眉そりのルールに違反し、大会に出ていない。

 「本校に限った規定ではない。解釈に幅が生じないよう、うぶ毛の処理も認めていない。理髪店でも整えないよう指導している」と校長。同校を含む10校以上が参加するスポーツの地区大会でも、「眉そりなどの違反生徒は大会に連れてこない」との申し合わせがあるという。

試合相手に配慮?

 なぜなのだろう。

 校長は「頭髪をそり込み、眉をそった生徒が過去に試合に出たところ、相手側から『怖い』『やりたくない』という声が出たためと聞いた」と話す。生徒が萎縮せず、実力を発揮するための配慮というわけだ。

 福岡県中体連事務局も取材に対し、眉や頭髪などを理由に大会出場が許可されなかったケースが過去にあったとした。

 ただ、校則の見直しが進んでいることを踏まえ、2021年度までは校則違反の有無をチェックしていた試合前点検の目的を、本年度から安全管理に変更した。競技中のけがにつながらないよう、爪の長さやピアスの装着を調べる。点検に引っかかった場合の出場の可否に関しては「学校ごとに校則は異なるので、生徒が出場に値するかどうかの判断は校長に委ねられる」(担当者)。

眉間の眉毛をそったのが校則違反だとして、3日間の別室登校を命じられた女子中学生(記事と直接の関係はありません)

空き教室で個別学習

 スポーツの試合出場にとどまらず、全校生徒を対象とした罰則もある。

 福岡県内のある公立中は眉毛を整えると校則違反となり、1回破れば担任との面談、2回目は空き教室で3日間の個別学習が課される。生徒は級友と顔を合わさず、終日1人で課題プリントをこなす。

 この中学の男性教員は「『もうしません』と生徒が根負けするのを待っているかのようだ」。罰則対象となった生徒から、「授業に参加していないので内容が分かりません」と言われたこともある。生徒の学びを制限する罰則に対して懐疑的だが、同僚の賛同は広がらないという。

 「生徒は厳しくした方がおとなしい。だから今のままでいい、という教員が多い」(西日本新聞・四宮淳平、小林稔子)

合理的理由あるか 教員の思考停止懸念

<「福岡市の制服を考える会」の後藤富和弁護士の話>眉毛を整えることを禁止する校則に、合理的な理由はあり得るのか。ルールを守らせることで生徒を危険から遠ざけているという判断かもしれないが、守ることが目的化し、教員が思考停止に陥っているのではないか。

 授業では多様性を説く一方、さまざまなルールで縛り付ける。それは高校まで続き、卒業した途端に「個性を発揮しろ」と言われる。こうした教育環境は自分の声が受け入れられ、物事を変える経験を奪う。生徒に諦めと、政治や社会は自分に無関係なものだという姿勢を植え付けてしまう。

 子どもたちには本来、自身を自由に表現する権利がある。教員たちはもっと、子どもの権利や人権について学ぶべきだろう。

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