特定外来生物アレチウリ、岩手県内で繁茂拡大 他植物に被害、繁殖力に駆除追いつかず
「特定外来生物の『アレチウリ』が、今年ひときわ目立っている」。岩手日報社の特命取材班に、岩手県滝沢市大崎の斉藤政宏さん(68)から情報が寄せられた。2020年にも岩手県二戸市の読者から同様の情報が寄せられ、本紙で掲載。ここ数年、県内各地で繁茂が広がり駆除が追いつかず、住民を困らせている実態が見えてきた。
情報を聞いて10月中旬、盛岡市と滝沢市の境の四十四田ダム上流に足を運んだ。するとそこには、つるをはわせながら北上川河川敷をびっしりと覆い尽くした葉の数々。滝沢市内では他にも空き地や耕作放棄地などを中心に各地で繁茂が見られ、木や電線にまで絡みついているケースもある。
アレチウリは北米原産のつる性植物で、現在は国内各地に分布。繁殖力が強く、在来種の植物を枯らしてしまうことから、06年から国の特定外来生物に指定されている。
ボランティアで駆除に励む斉藤さんは「いくらやっても増える」とため息をつき、「自治会や住民が協力し合い、人海戦術で一気に駆除するのが理想」と語る。近隣住民にプリントを配布するなど啓発活動にも取り組んでいるが、「初めて知った」という人も少なくないという。
県は本年度、県内市町村にアンケートを行い、3月末時点で県内13市町でアレチウリの生息を確認した。県農業研究センターなどによると、大豆畑や牛の飼料となるデントコーン畑などで農業被害も出ている。
種をつける9月上旬までに駆除を
県立大の渋谷晃太郎名誉教授(66)=環境政策=によると、アレチウリは一年で枯れる「一年草」のため、こまめに抜き取り、種の発芽を防げば数年かけて駆逐できる可能性もある。種をつける9月上旬までを目安に駆除することが重要という。特定外来生物のため生きたまま移動させず、抜き取った後は枯れるまで放置する必要がある。
同様の被害は全国で見られる。長野県は毎年6月をアレチウリ駆除強化月間と設定。自治体や住民団体が駆除作業に取り組み、新型コロナウイルス感染拡大前の17年度から19年度は毎年延べ2万2千人以上が参加した。
渋谷名誉教授は「まずはアレチウリの存在を市民に知ってもらうことから。岩手でも行政やマスコミが主導となり啓発していくことが重要」と語る。
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