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「ナーシングサロン」知ってますか 仙台郊外に10月開業 対話重ね患者に寄り添う

まるで家庭のリビングルームのような雰囲気の相談ルームに立つ鳴海さん=仙台市泉区の「ウェルネスライフ タンジェ」

 「『ナーシングサロン』を広く知ってもらいたい」。仙台市泉区の看護師鳴海幸(みゆき)さん(49)から「読者とともに 特別報道室」に取材依頼が寄せられた。病気やけがの手当てをする施設なのかと思いきや、鳴海さんは「悩んだり迷ったり、葛藤があったりして困ったときに話に来てほしい」と呼びかける。どんなサロンなのか、訪ねて話を聞いた。
(編集局コンテンツセンター・竹内明日香)

住宅街にたたずむ

 市中心部から車で約30分。泉区住吉台の住宅街にナーシングサロン「ウェルネスライフ タンジェ」はある。スタッフは鳴海さん1人。柔らかい日の光が差し込む相談ルームは、個人宅のリビングのようだ。

 部屋の中心には、テーブルを挟んで向き合う2脚の椅子。鳴海さんはここで利用者と向き合い相談を受ける。

住宅街に立つ一軒家の1階で営業している

医療との懸け橋に

 柱となるサービスがカウンセリングだ。「医師にはこう言われたけれど、もっと他の治療法はないのか」「家族を介護しているが、精神的な負荷が大きい」。治療や生き方の選択を迫られた患者の葛藤に寄り添い、医師らとの認識のずれを対話によって埋めていく民間資格「メッセンジャーナース」を持つ看護師として、患者や家族の話に耳を傾ける。

 「自分の生き方を自分で決めるお手伝いができるよう、医療と受け手の懸け橋となるのが役目」と鳴海さん。専門知識を持ち、医療現場の背景も理解している立場から、必要な情報を提供してサポートする。

 くつろぎながら話ができるよう「手足湯」のサービスも実施している。「血行が促進され、体がぽかぽかと温まる感覚にはまる方が多い」。手足湯という方法で利用者にアプローチする施設は珍しいという。

 医療機関の受診に同行したり、在宅介護を受ける人を家族の代わりに見守ったりする訪問ケアもしている。

看護師歴30年

 鳴海さんは看護師歴約30年。病院勤務を経て、障害者支援や訪問看護に携わってきた。2016年~22年3月は、終末期患者の緩和ケアなどを行う民家型ホスピス「もりとびの家」(富谷市)の運営に当たった。

 17年に亡くなった父が闘病中、本人が望まない検査をしようとする主治医の方針に疑問を持った。「自分が看護師だからこそ『本当に必要な検査なの?』と思ったが、誰に訴えればいいのか分からずもやもやした」。そんな中でメッセンジャーナースという資格に出合い、20年に認定された。

看護師という立場から利用者をサポートする鳴海さん

忘れられぬ思い

 サロンを開くきっかけとなった出来事がある。

 ある男性との出会いだ。男性は定年退職後も第二の職場で働いていたが、体が思うように動かなくなった。のちに筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症していたと分かる。頼れる家族がいなかったため、近所に住む元同僚男性に買い物や通院介助を求めるようになった。

 元同僚は男性のため献身的に支援を続けたが、症状が重くなって負担も増えた。元同僚は「疲れ切って泣きそうな日もあった」と鳴海さんに明かした。

 男性も日々動かなくなる体に戸惑いつつ、呼吸器を着けないことを一人で決め、もりとびの家に入った。「体調が整わないから無理だとしても、仕事がしたい」と鳴海さんに筆談で訴え、10日ほどで亡くなった。

 「2人にもっと早く出会っていれば、男性が生きる道を一緒に考えたり、介護する元同僚の葛藤に寄り添えたりできたのに」。医療の現場ではない場所にこそ、看護師のニーズがあると考え開業を決めた。

スパの設備に湯を注ぐ鳴海さん

「しっかり聞いてくれた」

 八幡平市のサービス付き高齢者住宅の一角で、半年ほど手足湯を提供しながら話を聞く試みを経て、今年10月に仙台で独立した。

 オープンから1カ月余り。利用者の輪は広がりつつあるという。盛岡市の女性(37)は「病院の看護師とは違う視点で話を聞いてもらえる。病院で話したら否定されるような話も、しっかり聞いてくれた」と話す。治療で納得できないことがあったが、相談したことで気持ちの整理ができたという。

 鳴海さんと15年来の知人という宮城野区の女性(65)は、医療ケアが必要な娘(32)の将来や自分の老後について相談する。「聞き上手。深刻な話だけでなく雑談も弾み、手足湯の効果も相まってリフレッシュできる」。

利用者は手足湯でリラックスしながら、鳴海さんに相談できる(タンジェ提供)

自己決定を手助け

 鳴海さんは現在、県内唯一の認定メッセンジャーナース。訪問看護や障害者福祉の現場も知る強みを生かしながら、地域の人たちが自分らしく生きるためのサポートに取り組む。

 「健康な人もそうでない人も、生をいかにつくっていくかを自己決定するのが『ウェルネス』。地域の身近な看護師として、誰でも気軽に来てもらえれば」と呼びかける。

手足湯入浴前に着替えたり、体を休めたりできる部屋も用意する(タンジェ提供)

【ウェルネスライフ タンジェ】
 営業時間は火曜午後0時半~6時半、水・木曜午前11時~午後8時、金曜午前11時~午後5時、土曜午前11時~午後3時。日・月曜定休。完全予約制。予約は前日午後5時まで。連絡先は090(5987)6823。

 相談料は5000円(60分未満)から。手足湯は相談料込みで8分浴×3セット6800円から。訪問ケアは1時間1600円(夜間加算あり)

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