(453)冬眠の蝮(まむし)のほかは寝息なし/金子兜太(1919~2018年)
奇妙な情景です。マムシが冬眠していますが、そのほかの寝息はありません。他の生き物は寝ていないのか、冬眠する動物がマムシ以外いなくなったのか、状況の解釈は分かれ、答えはありません。しかし句に立ち戻ると、ここにはマムシの寝息の音だけが書かれていることに気付きます。有毒の生き物である怖さは冬眠によって鎮…
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。