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ヘルプマーク知って 生活で援助、配慮求める印 福井の難病女性「声かけが当事者の安心に」

 難病や内部障害のある人らが周囲に示して援助や配慮を受けやすくする「ヘルプマーク」。かばんに付けて暮らす福井県内の60代女性が「マークへの理解が広がってほしい」と、福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)に投稿を寄せた。マークによってデリケートで重要なメッセージを一目で伝えられ、女性は「ちょっとした配慮が当事者の安心につながる」と訴える。

難病や内部障害のある人らが周囲に示して援助や配慮を受けやすくする「ヘルプマーク」。カード型(上)とストラップ型がある

 女性は数年前から国指定の難病を患い、日常生活では転ばないようにつえをついてゆっくりと歩き、重い物を持たないようにするなど細心の注意を払う。医師から制限されている動きは多く、外出時にヘルプマークは手放せない。

 マークを提示しても援助を受けられなかったり、嫌な顔をされて傷ついたりした経験がある。あるスーパーでは、レジで精算する際、マークに気付いた店員が「袋詰めしましょうか」と声をかけてくれるという。しかし、別のスーパーでマークを見せて袋詰めをお願いしたところ、戸惑った表情の店員に「できません」と断られた。女性は「(接触を控える)新型コロナウイルス対策が影響しているのかも」と思いつつも、マークの理解度がまだ低いと感じている。

 マークに理解があれば、援助や配慮が必要なことを当事者がその都度説明しなくても周囲に伝えられる。女性は「自分から声をかけることが苦手な人もいる。困っていそうであれば声をかけてあげてほしい。ちょっとした一言、行動が安心につながる」と訴えた。

 ヘルプマークは、県内では県が2018年9月に導入。県や各市町の福祉担当窓口、県身体障害者福祉連合会などで無料配布している。今年3月末までにカード型、ストラップ型を合わせ約1650部が配布された。県が20年に行った県民アンケートでは「ヘルプマークを知っている」との回答は4割にとどまっており、県障がい福祉課は「出前講座なども行い、今後は子どもや企業向けの周知にも力を入れていきたい」としている。(福井新聞)

[ヘルプマーク]義足や人工関節を使っている人、内臓などの病気がある人、妊娠初期の人らが、外見では分からなくても周囲の援助や配慮を必要としていることを知らせるマーク。2012年に東京都が作成し、全国に広がった。

ヘルプマークなど障害のある人への援助や配慮を求めるマークを紹介する福井県のポスター=県庁

配慮必要なマークは多様 福井県、16種を紹介

 障害のある人に関するマークは多くあり、福井県の啓発ポスターではヘルプマークを含む16種類を紹介している。県身体障害者福祉連合会では「それぞれのマークは当事者の『配慮してもらいたい』という切実な思いの表れ」と訴える。

 国際的に定められたものでは、車いすをモチーフに全ての障害者への配慮を求める「障害のある人のための国際シンボルマーク」などがある。ヘルプマークと同様に当事者が示すマークは、人とハートをデザインし身体内部(心臓、呼吸機能、腎臓、免疫機能など)に障害のある人への配慮を求める「ハート・プラスマーク」、聴覚の障害を表す「耳マーク」がある。

 「手話マーク」や「筆談マーク」はそれぞれ、手話や筆談に対応できることを示している。「ハートフル専用パーキング利用証」など県が定めたものもある。

 ヘルプマークの配布窓口の一つ、県身体障害者福祉連合会の事務局(福井市光陽2丁目)には「通勤や通学時に周りの人に知ってもらいたい」と、当事者や家族が受け取りにくるという。伊藤繁輝事務局長は「学校教育を含め、国や自治体がもっと周知してもらえれば」と話している。(福井新聞)

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