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<311次世代塾>自分の言葉で伝えて/第6期第7、8回詳報

震災遺構大川小を視察

震災前や被災直後の学校の様子を話す佐藤さん(右)=石巻市の大川小

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第6期第7、8回講座は2022年9月10日、石巻市の震災遺構大川小を視察した。同小は2階建て校舎の屋上まで浸水し、児童74人と教職員10人が犠牲になった。受講生30人が訪れ、津波被害や遺族の思いを学んだ。

 大川伝承の会共同代表の佐藤敏郎さん(59)が講師を務めた。同校6年の次女みずほさん=当時(12)=を亡くし、遺族として語り部活動を続けている。

 受講生は犠牲者に花を手向けた後、校舎と校庭を見学。佐藤さんは各学年の教室を紹介しながら花見給食、運動会などの行事を振り返り、「震災前は子どもたちが声を上げて元気に走り回る場所だった」と、かつての学校の様子を紹介した。

 佐藤さんは海側にねじれて倒れた体育館通路、泥の付いた2階の天井を示し、「津波は3.7キロ先の海から水だけでなく建物や船、海沿いの松原も巻き込んで一帯を襲った」と津波の威力と破壊力を説明した。

 児童らは地震後に校庭に51分待機した後、避難を開始して間もなく波にのまれたという。児童が授業で上った裏山に受講生を案内し「山は命を救わない。救うのは行動だ」と語る佐藤さん。「大事なのは『逃げる』『どこに』をあらかじめ決めておくこと。事前の備えが重要だ」と続けた。

 受講生は児童が避難した校庭からの経路を、佐藤さんの合図で走って移動し、震災当日の行動を追体験した。佐藤さんは「あの日の子どもたちの顔を想像してほしい。その中に自分と大切な人を入れて、防災をわがこととして考えてほしい」と呼びかけた。

 受講生から「震災を伝える上で気を付けることは何か」との質問が出た。佐藤さんは戦争体験の継承などを例に挙げ「当時、生まれていなかった人にも語り継いでもらわないといけない」と指摘。「伝えたい、命が助かってほしいという思いが大事。自分なりの言葉で熱を持って伝えてほしい」とエールを送った。

<受講生の声>

■もしもを考える
 「大川小は未来を拓(ひら)く場所」という言葉が、印象に残りました。子どもが亡くなった悲劇の場所であると同時に、後悔や教訓を未来の防災につなげる場所だと理解しました。「もしも」を「いつも」考えるという、防災や避難の心構えも学ぶことができました。(富谷市・宮城教育大3年・菊池さくらさん・20歳)

■教訓と経験 力に
 震災から11年たった今も大川小は津波の現場そのままで、時間が止まったようでした。将来、教員を目指しています。講師や地域の人がつないできた教訓と経験に、力をもらいました。あのとき、自分がここにいたらと考えて学びを深め、次の世代に伝えたい。(宮城県丸森町・東北福祉大1年・野田康介さん・19歳)

<メモ>

 311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

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