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餅が喉に詰まったら? せきをさせ、背中たたいて 掃除機は「非常に危険」 富山

 「餅が喉に詰まったら、どうしたらいい?」。北日本新聞「あなたの知りたいっ!特報班」に、こんな質問が届いた。餅を食べる機会が増える正月を前に、富山市消防局に対処法を聞くと、せきをさせたり、背中をたたいたりする方法が有効だという。掃除機で吸い出す方法は危険だと言い「絶対にしないで」と呼びかけている。(北日本新聞・松下奈々)

背部叩打法を実演する穴田さん(左)=富山北消防署

 餅は温度が下がると硬くなり、粘膜に張り付きやすくなる。消費者庁が2018、19年の2年間の窒息事故を調べたところ、全国で65歳以上の計661人が餅を詰まらせて亡くなっていた。中でも80代が最多で、男性は女性の2・6倍多かった。

 富山市消防局のまとめでは、市内で過去5年間に餅を詰まらせて救急搬送されたのは28人で、1月が11人と最も多い。28人の8割近くに当たる21人が生命の危険がある重症で運ばれ、うち1人は消防が死亡を確認している。

 富山北消防署救急課主任の救急救命士、穴田靖子さん(36)は「窒息事故は一刻も早く取り出さないと危険」と話す。まず本人に詰まったかどうかを確認し、せきができるならせきを続けさせてほしいと言う。早く119番することも大事だ。

寝そべった状態で行う背部叩打法

 せきができない場合は、背中をたたく「背部叩打(こうだ)法」がある。対象者は座っていても、横になっていてもいい。対象者の左右の肩甲骨の真ん中を、手のひらの付け根の部分で、斜め上に押し上げるようにして強くたたく。おなかを圧迫するハイムリック法(上腹部圧迫法)もあるが、穴田さんは「有効だが初心者は難しいかもしれない」と語る。

 対象者がぐったりして反応がなくなった場合は、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行う。圧迫の刺激で餅が出る場合もある。

乳児の場合はうつぶせにして、片方の手であごを支えながら利き手で背中を強くたたく
片方の手であごを支える

 過去には掃除機で吸う方法も知られていたが、最近の掃除機は吸引力が強く、口内が傷付く恐れがあるという。同市消防局でも、掃除機を使ったため喉の奥の餅が血で見えなくなり、除去に時間がかかったケースがある。消防には吸引専用の機器がある。穴田さんは「掃除機で吸うのは大変危険な行為。絶対にしないでほしい」と話している。

飲み込む力、加齢で低下「一口は小さめに」 富山県リハ病院内科部長・木倉さん

 飲み込む力の低下に詳しい富山県リハビリテーション病院・こども支援センターの副院長・内科部長、木倉敏彦医師(61)に、食品による窒息事故の危険性と防ぐ方法を聞いた。

 ーどんな人が詰まりやすいのか。

 高齢者や長く入院した人は喉の力が弱く、飲み込む力が低下している。歯がないなど口が閉まりにくい人も飲み込む力が弱い。お年寄りで半年に4、5キロほど体重が減った人や、外出が減った人は要注意。筋力も低下している恐れがある。3、4歳の幼児も喉の力が弱く、詰まることがある。

 ー餅はなぜ危険なのか。

 形が変わりにくく、それなりに大きいものは詰まりやすい。餅はその代表格。お年寄りに「食べていい」と言う医者はいない。

 ーそれでも食べたいときの注意点は。

 窒息事故はほんの数分でも脳にダメージを与え、後遺症を残す可能性がある。ただ、禁止された人が隠れて食べてしまうとより危険だ。食べるとしたら、餅はなるべく小さくして、食べる前に水分をよく取る。家族は目を離さないようにしてもらいたい。昨年食べていた人も、今年は大丈夫だという保証はない。新年最初の一口は小さめを心がけてほしい。

 ー餅以外で気を付けるべき食品は。

 こんにゃく、ステーキ肉、イカの刺し身など、かみ切ったつもりでもかみ切れていない食品が詰まりやすい。食パンやコッペパンも水分が少なく、窒息事故が多い。

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