娘のマイナカード、交付されない 親権ないと受け取れず 総務省「想定してなかった」
政府が「2022年度中にほぼ全国民が取得」との目標を掲げるマイナンバーカード。買い物に使えるポイント付与といった促進策だけでなく、現行の健康保険証を廃止してカードと一体化した保険証に切り替える「事実上の義務化」もちらつかせ、普及に躍起になっている。しかし、15歳未満の子どもの場合、家庭環境によってはカードを受け取れない事例があることが熊本日日新聞の「SNSこちら編集局」(S編)の取材で分かった。
S編に声を寄せたのは熊本市南区に住むパート女性(49)。2014年に離婚し、12歳の次女と実家で生活している。
離婚調停では、夫が次女の親権を主張して譲らなかった。そこで女性は、親権の一部で、実際に子どもを養育する権利である「監護権」を分離して獲得し、次女と暮らすことにした。
しかし元夫が、面会した際に次女を女性の元に帰すのを拒んだり、養育費の支払いを突如打ち切ったりするなどしたため関係が悪化。16年春に親権を譲るよう掛け合ったが拒否され、連絡が途絶え、それから6年半は全く会っていないという。
昨年9月、女性は自宅に届いた書類で次女のマイナンバーカード交付を申請。11月上旬に熊本市から交付通知書が届いたが、問い合わせると「カードを渡せない」と説明を受けた。実は15歳未満のマイナンバーカードの受け取りには、本人に加えて親権者または法定代理人の同席が必要とされていたからだ。
女性は「交付申請書と通知書は私の手元に届いたのに、やるせない」と肩を落とす。一方、熊本市は熊日の取材に「総務省にも確認したが『今回の事例ではお渡しできない』と回答があった」と説明した。
総務省の見解はどうか。
同省マイナンバー制度支援室によると、カードの交付は全自治体に共通の事務処理要領で通知している。法定代理人が同席できない場合は里親などの「復代理人」で可能と定めているが、親権者と監護権者は同一の場合が多く、今回のように別の場合は想定していなかったという。
同支援室は「現状、女性にはお渡しできないとしか回答できない。ただ、マイナンバーカードを取得しにくいという声は他にも寄せられているので、対応を検討したい」とした。
女性は今回、次女のマイナンバーカード取得を諦めるという。届いた次女の交付通知書を見つめながら「政府が普及を目指すのなら、全ての人が取得しやすい運用を考えてほしい」と訴えた。(熊本日日新聞・岡本遼)
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