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<311次世代塾>学習支援で関係構築/第5期第6回詳報

仙台・NPO代表理事 大橋雄介さん オンライン講義

避難所で段ボール箱を机に子どもの学習支援を行うアスイクのスタッフ=2011年4月、宮城県亘理町
大橋雄介さん

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第5期は2021年9月11日、第6回講座をオンライン方式で開催した。貧困や不登校、虐待など困難を抱える子どもと家庭をサポートするNPO法人アスイク(仙台市)代表理事の大橋雄介さん(41)が「震災直後の学習支援の現場から」のテーマで講義し、大学生約50人が受講した。

 アスイクは震災直後、学校再開のめどが立たない中、子どもの学習の遅れを防ごうと支援活動を始めたが、被災地は当初、食べ物や衣服に事欠く状況で反応は良くなかったという。

 それでも震災の約3週間後、仙台市内の避難所で小中学生4人に学生ボランティアが勉強を教えたのを皮切りに、石巻市、多賀城市、宮城県亘理町と活動範囲を広げた。被災世帯の生活が仮設住宅に移った後も学習支援を続けた。

 活動を通して、親の事情で学校に通えず名前を漢字で書けない中学生、精神疾患で会話が難しい親と暮らす小学生らに出会った。大橋さんは「見えにくかった子どもの貧困問題が震災で顕在化した。生活基盤が脆弱(ぜいじゃく)な家庭ほどより深刻な影響を受けた」と振り返る。

 仙台市内のみなし仮設住宅の子どもを対象にした支援拠点も設けた。市外から移り住んできた親子の孤立に触れ、「問題を一律に捉えず、地域性や個々の事情に目を向けた支援が必要だった」と振り返った。

 大橋さんは「学習支援は関係をつくる入り口で、家庭の問題を拾い上げ、対応することが大事だ」と強調。支援団体の連携とともに「生活基盤が脆弱な人が困りにくい社会を築くことが、災害時のセーフティーネットになる」と主張した。

 新型コロナウイルスの感染拡大後は、生活困窮家庭の見守りに関わり、延べ4000世帯に食品を届けた。「震災から10年活動を続けた土台があったからすぐに動けた。震災の教訓の重要性を実感した」と述べた。

 質疑応答で受講生に子どものケアに関わるポイントを問われ「ケアする側をケアすることが大切。問題を一人で抱え込まないよう、仲間同士でサポートし合ったり、スタッフと共有したり組織的に対応してほしい」と助言した。

<受講生の声>

■周囲の支え必要
 避難所や仮設住宅で学習支援をする中で、震災前から貧困問題を抱えていた子どもの実態に直面したという話が印象に残りました。不登校やヤングケアラー、虐待などの問題に自分も含め周囲が気付き、子どもを支えていかなくてはいけないと改めて感じました。(宮城県柴田町・仙台大3年・中川凜さん・20歳)

■問題の共有大事
 震災発生当時、子どもの学習支援が難しかったことが分かりました。支援を一方的に行うのではなく、受ける側にも役割をつくるなど自己肯定感が下がらないような支え方や、支援する側のケアも行い、問題を抱え込まず共有することが大事だと思いました。(宮城県利府町・東北工大1年・早坂至恩さん・19歳)

<メモ>

 311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。

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