<311次世代塾>想定外の災害 認識を/第5期第11、12回詳報
正しく恐れ備えが必要
東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第5期は2021年12月11日、第11、12回講座を開いた。宮城県南三陸町の震災復興祈念公園を大学生約30人が訪れ、町職員ら43人が犠牲になった旧防災対策庁舎、町を襲った巨大津波を伝えるモニュメントなどを見学した。
元副町長で南三陸研修センター顧問の遠藤健治さん(73)が、町役場の被災状況や復興の経過について講話した。
遠藤さんは公園に整備された丘を登り、周囲に見える志津川駅跡や災害公営住宅など津波被害と復興状況を示す風景を紹介。16.5メートルの津波高で丘を1周する「高さのみち」では「海がせり上がって町全域に押し寄せた。津波の高さと自然の猛威を感じ取ってほしい」と呼び掛けた。
町の死者・不明者は830人を超える。遠藤さんはハザードマップの浸水想定区域外で多くの犠牲者が出たことを説明し、「『ここに津波は来ない』と認識したことが被害につながった可能性がある。マップは一定条件下の目安であり、想定外も起こり得ると伝え、見直しを続ける必要がある」と強調した。
復興計画に基づくまちづくりは、商店街などは盛り土した津波浸水エリアに、住宅は高台に設けるなど「職住分離」で進めた。「生活の利便性は低下した。津波への安全確保を優先したゆえの難しさをどう解決するかが今後の行政課題だ」と分析した。
復興のまちづくりは山を削って住宅や公共施設用地を造成したため、土砂災害など津波と違う災害が懸念される。遠藤さんは「新たなリスクに危機意識を持って備える必要がある。皆さんも自宅周辺の災害リスクを認識し、命を守る避難行動を考えてほしい」と訴えた。
受講生からは、防災対策庁舎で孤立した職員の行動や、行政機能の復旧などについて質問が出た。遠藤さんは庁舎屋上で同僚と共に津波にのまれた体験を語り、「災害で同僚も生活も一瞬で全てを失う現実がある。災害を正しく恐れ、備える意識を持って日々の生活を大切にしてほしい」と語り掛けた。
<受講生の声>
■津波の高さ衝撃
公園の丘から旧防災対策庁舎を見下ろし、津波の高さに衝撃を受けました。ハザードマップを想定の一つとして活用し、油断せず命を守る行動を考えることが大事。教員志望なので、子どもに命を守る大切さを伝えられるよう学びをさらに深めたい。(福島市・宮城学院女子大3年・佐藤由希菜さん・20歳)
■命守る意識持つ
今まで訪れた被災地で最も海が近く、骨組みだけが残った旧防災対策庁舎を見て、この地域を襲った津波の威力について考えさせられました。「一瞬にして全てを失う現実がある」という言葉が印象に残っています。普段から命を守る意識を持ちたい。(仙台市青葉区・東北大3年・小松士恩さん・21歳)
<メモ>
311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。
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