<311次世代塾>判断と行動 命救う/第5期第9、10回詳報
<311次世代塾>判断と行動 命救う/第5期第9、10回詳報
東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第5期は2021年11月20日、第9、10回講座を開いた。児童74人と教職員10人が犠牲になった石巻市の震災遺構大川小を大学生30人が訪れ、津波で被災した校舎と裏山、敷地内に7月開設された「大川震災伝承館」を見学した。
講座は、同校6年の次女みずほさん=当時(12)=を亡くし、語り部活動に取り組む大川伝承の会共同代表の佐藤敏郎さん(58)が講師を務めた。
佐藤さんは校舎を巡りながら、教室の様子や行事など震災前の学校生活を紹介し、津波で水没した2階建て校舎の被災状況を説明。倒壊して鉄筋がむき出しになった渡り廊下や、泥で汚れた2階天井などを確認した受講生に「津波は家や船、車、何万本もの松原などと共に学校を襲った。水以外も巻き込むことで破壊力が増した」と解説した。
揺れが収まった後、児童が校庭に51分間待機し、その後、津波に襲われた経緯を説明。児童がシイタケ栽培の学習で登っていた裏山から受講生と共に校舎を見下ろし、「山はあっても命を救えなかった。命を救うのは山に逃げるという判断と行動だ」と強調した。
川に近い地点へと、児童らが約1分避難した経路も案内した。受講生は道筋を実際に急ぎ足でたどり、避難行動を追体験した。
佐藤さんは「走ってくる子どもの顔を想像して」と呼び掛け、「災害は防げないが大勢が犠牲になる未来は変えられる。自分と大切な人を想定に入れて防災をわがことと考え、事前にできることを本気で準備してほしい」と訴えた。
講話の後、受講生から「震災を語り継ぐことだけでなく、何をすればいいか考えたい」といった感想が寄せられた。
佐藤さんは震災当時の児童が「後悔しないために」と保存を訴え、遺構としての整備につながったと紹介し、「大事なのは行動。思ったことはやってほしい」と若い世代の今後の活動に期待を寄せた。
<受講生の声>
■命守れる教員に
災害が起きる前に、本気で対策を考えることが大事だと実感しました。大川小の児童が避難した道を他の受講生と一緒に走って、子どもたちはどれだけ怖かったろうと思いました。教員志望です。被災者に学び、命が守れるようになりたい。(仙台市青葉区・東北福祉大1年・福田涼風(すずか)さん・19歳)
■津波 理解深まる
実際に訪れて、校舎を襲った津波の高さと破壊力だけでなく、川や裏山などの位置関係が分かり、大川小で起きたことについての理解が深まりました。裏山は子どもでも登れそうだったため、事前に避難行動を決めておくことの重要性を感じました。(仙台市宮城野区・宮城教育大1年・遠山和希さん・19歳)
<メモ>
311「伝える/備える」次世代塾を運営する推進協議会の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、宮城大、仙台大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。
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