回らぬ風車、存廃の岐路 石川・内灘の風力発電20年の寿命迫る
石川県内灘町の金沢医科大学近くの回らない風車。このまま放置しておいても負の遺産を残すだけでは。早急な対応が求められると思います =金沢市の男性(69)
石川県内灘町にある風力発電所「サンセットウイング内灘」に関する質問が、北陸中日新聞の「Your Scoop(ユースク)〜みんなの取材班」に寄せられた。故障が原因で5年余り運転を停止したまま。一般的に風車の寿命とされる耐用年数の20年が迫り、町は存廃の決断を迫られる。取材を進めると、全国の自治体でも同様の悩みを抱えている実情が見えてきた。
風車は環境問題に取り組む町のシンボルとして、河北潟放水路にかかるサンセットブリッジ北側に2003年に設置。出力は1500キロワットで、一般家庭700世帯分の年間消費電力を発電。年間約3000万円の売電収入を見込み、建設費などの償還に充てる予定だった。
しかし、風車は度重なる落雷の影響で故障が相次ぎ、見込みが外れた。売電収入を差し引いたこれまでの収支は6億円余りの赤字。17年6月の停止後も保守点検に年間700万〜800万円を払い続けている。
町が検討する選択肢は、設備更新による継続、民間譲渡、撤去の三つ。住民課の宮崎重幸担当課長は「再生可能エネルギー推進のためには大事な施設。町としてはできれば残したい」と話し、政府が50年に温室効果ガスの実質的な排出ゼロを目指す中で、修繕費に対する補助金創設を期待する。とはいえ、そう簡単に事は運ばない事情がある。
町の試算では、発電機などを更新する費用に1億1000万円が必要で、撤去にも2億円かかる。民間譲渡も難航している。築20年近くたっている上、風車設置後に施行された「いしかわ景観総合条例」で、のと里山海道の周辺で、大規模建築物を建設してはならないとされ、建て替えのネックになっている。
実は内灘町が抱える問題は、風力発電所を設置した全国の自治体で共通する。1990年代後半以降に国の補助金などで建てられた風力発電所が次々と耐用年数を迎えている。17年に風力発電推進市町村全国協議会などが調査した結果、64カ所の発電所のうち建て替えを実施(予定含む)は15%にとどまり、40%は建て替えを実施しないと回答した。
現在は風車が大型化し、4000〜5000キロワットが主流。自治体が導入してきた小中規模の風車は、ほとんどが生産を終了。内灘町のドイツ製風車も、同型機はすでに製造されておらず、海外から中古部品を調達する必要がある。さらに再エネ電気を国が買い取る固定価格買い取り制度では、建て替え後は価格が下がる仕組みで、採算性が下がる。
風力発電導入を先駆けてきた自治体の役割は終わったのだろうか−。日本風力エネルギー学会の三保谷明会長は「現在のエネルギー危機の中で、純国産のカーボンニュートラル電源を確保するのは重要な意味がある。自治体自ら取り組むことで風力発電への社会受容性も高まる」と指摘。「民間資金を活用するPFI方式のように民間に委託し、より効率的な事業運営に持っていくのも一つのやり方」と提案する。(北陸中日新聞・奥田哲平)
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