10分で完食、このままでいいの? 名古屋の中学校、短い昼食時間
次女(13)から中学で昼食に充てる時間が10分程度しかなく、時間が足りずに毎日残していると聞きます。食べ残しはもったいないし、味わって食べてもらいたいのに…。食べきれない人は実際にはどのくらいいるのでしょう?=名古屋市守山区の女性会社員(48)
10分程度では大人でも食べきるのが大変と感じる人がいるのではないでしょうか。昼食の時間が短いと感じている人はどれくらいいるのか、探ってみると想像以上に多くの「困った」の声が聞こえてきました。(中日新聞名古屋本社・城石愛麻)
20分設定も準備などで短く
投稿者の次女が通うのは名古屋市内の公立中という。昼食時間に設定されているのは4時間目終了後の20分間。準備の時間などを除けば食べる時間は10分程度しかないそうだ。4時間目に体育など移動を伴う授業がある場合は、さらに短くなってしまうという。
市内の公立中を調べてみたところ、「スクールランチ」が昼食時間に影響しているようだ。スクールランチはほぼ全校が採用し、校舎内の受け渡し場所まで弁当を取りに行った上で教室で食べたり、ランチルームと呼ばれる部屋で配膳された昼食を食べたりする。だが、弁当の容器は食後に元の場所に返却しなければならず、ランチルームへの移動は手間もかかる。人気の弁当なら並ばなければならない。このため、実際の昼食時間が短くなるというわけだ。
市教委学校保健課によると、多くの学校が昼食時間を20分程度としているが、時間内に食べきれなければ昼食時間後の「昼放課」という自由時間(10〜20分)に食べることも認めている。ちなみに市内の公立小は給食時間の目安を45分としている。中学と比べ、かなり長いといえる。担当者は「中学校生活に不慣れな1年のうちは昼食時間が短いと訴えることもあるが、学年が進むにつれて慣れていくようだ」と説明する。
時間の延長には賛否
昼食時間が短いと感じるのは名古屋市内のスクールランチ利用者だけだろうか? 1〜4日に中日新聞のユースク取材班でアンケートしたところ、中部地方を中心に中学生本人や保護者ら574人から回答が寄せられた(有効回答は304人)。昼食の形式は65%が「給食」と答え「持参の弁当」(24%)や「スクールランチ」(11%)は少数派だった。
学校が設定している昼食時間は「30分以上」が最多の32%、「20分」の31%が続いた。実際に食べるのに充てられる時間は「15分程度」が最多の45%。「10分程度」「20分以上」がいずれも27%で「5分以内」は1%だった。
「今のままで良い」とした人が34%だった一方で、「あと5〜15分以上ほしい」と答えた人は66%に上った。「時間が足りなくて食べ残すことは?」との質問には、43%が「月に数回以上残す」と答えた。
「急ぎ過ぎてせっかくの給食を味わえないし、おなかが痛くなる。ご飯を減らしているけどおなかがすいてしまう」(岐阜県、女子中学生)「急いで食べて何度も吐いてしまい、トラウマ(心的外傷)になってしまったようだ」(愛知県、保護者の50代男性)など切実な声も。「集中して食べれば短い時間でも十分」「食事は家庭でしつけるべきこと。学校に負荷をかけるべきではない」といった意見もあった。
食育への影響に懸念
中学の昼食はどうあるべきなのだろう? 文部科学省に取材すると、昼食時間の目安は設けていないが、担当者は「学校では味わって食べることの大切さを教えており、昼食をかきこまねばならない状況であれば食育の基本から外れている」と話した。
食育に詳しい長野県立大食健康学科の中沢弥子(ひろこ)教授(58)は「中学の昼食時間は地域の食文化や栄養、マナーなどを学べる最高の機会。準備や片付けの時間を除き、20分は確保してもらいたい」と求める。
アンケートでは大人から「私の時代はもっと昼食時間に余裕があった気がする」とのコメントもあった。「中学の昼食時間は昔も十分とは言えなかったが、最近は学校生活全体にゆとりがなくなっているのでは」と中沢さん。「食育の大切さを見直し、昼食時間が十分にとれるよう、学校や行政、地域で考えてみては」と提言した。
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