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「41年目の敵討ち」あす発売 郷土史研究家の阿部さん執筆 石巻かほく連載を書籍化

発行される「41年目の敵討ち」

 江戸時代末期に石巻であった敵討ちの実相に迫る「41年目の敵討ち ~石巻と久米幸太郎~」(三陸河北新報社発行)が15日、発売される。郷土史研究家で石巻市芸術文化振興財団理事長の阿部和夫さん(84)=石巻市向陽町=が「石巻かほく」に連載した記事の書籍化。「敵討ち禁止令」の布告から150年を迎え、日本で2番目に長いとされる41年間にも及んだ壮絶な敵討ちを多角的に検証した。

 約200年前の1817(文化14)年12月、新発田藩(現新潟県新発田市)の藩士久米弥五兵衛が同僚の滝沢休右衛門に殺害された。遺児の久米幸太郎は親族らと手分けし、苦労を重ねながら北海道から九州まで全国各地を探索。ついに57(安政4)年10月、牡鹿半島の寺院に僧侶として潜んでいた敵を同市渡波の祝田浜で討ち取った。父親の敵討ちに一生をかけた劇的なストーリーは世間でも評判を呼び、小説や講談でも取り上げられた。

 石巻市教育長も務めた阿部さんは、石巻地方や新潟県に残る古文書、研究書を比較。長期にわたる調査、取材を踏まえ、当時の瓦版などさまざまな文献を分析して相違点や疑問点を洗い出した。その研究成果は「41年目の敵討ち 久米幸太郎 祝田浜で」のタイトルで2021年4~12月の「石巻かほく」に週1回、計36回連載された。

 相違点の一つは文献によって敵討ちの描写が異なること。新潟県側の史料では武士らしく正々堂々と相対しているが、石巻や住民の目撃談によると仲間が取り押さえて強引に斬首したことになっている。阿部さんは、史料の出所や書く側の立場によって解釈が分かれる部分もあると指摘する。

 資料編とし、久米幸太郎にまつわる石碑が石巻市内で発見されたことなどを報じた石巻かほくの記事を紹介。さらに石巻が関連した敵討ちとして主殺しの罪で捕まった函館の姉妹が脱獄し、石巻市湊まで逃避行した事件も掲載している。

 明治政府による「敵討ち禁止令」が1873(明治6)年2月に布告されてからちょうど150年。阿部さんは「(禁止令布告以前の久米の敵討ちが)国が認めた最後の敵討ちとした書物もあったが、事実に反する。その土地の歴史は意識して伝えないと薄れていく。この本が歴史伝承の一助になれば幸い」と記している。

 A5判、111ページ。定価1100円。石巻地方の主な書店や河北新報販売店、三陸河北新報社で取り扱う。連絡先は同社事業部0225(96)0321=平日午前9時半~午後5時=。

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